転職して1年経って本棚を見て気づいたこと

 転職して1年。
 ふと本棚を見たらこんな感じでした。

 

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 転職してから買った本もありますが、半分以上は前職の時から読んでいた本でした。
 「あー、だから転職したんだな」と思った瞬間でした。

 

 今は人材育成の仕事をしているので、そういった関係の本を読むことが多いです。それは当たり前かもしれません。

 ところが、振り返ってみると、行政や土木の仕事をしていた前職の時は、それ関係の本を自分から買ったことはありませんでした。もちろん、仕事上手に入った資料や仕事上読まなければならなくなった本はたくさん読みました。

 しかし、自分の興味の赴くままに、もしくは、仕事と関係ないのに読んだ本はありませんでした。
 この違いは大きいのではないか、と気づきました。

 

キャリアを考える3つの問い

 私は40代半ばでキャリアを大きく転換しました。転職の際は、転職コンサルタントの方の話を伺い、またいくつか転職のHow to本を読み、キャリアについて考えましたが、キャリアについては、もう何十年も前から研究が進んでいます。

 キャリアを考える際の基本となる問いとしては、MITのエドガー・シャイン教授が提案した3つの問いがあります。

①自分は何が得意か
②自分は一体何をやりたいのか
③どのようなことをやっている自分なら、意味を感じ、社会に役立っていると実感できるのか。

 

 この3つの問いは、良くCan/Will/Mustといった3つの円で示されることが多いです。

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 自分の場合、行政官であり土木技術者であった前職では、Mustの部分が大きかったと言えます。人々の生活を長きにわたって支えるインフラ(道路や堤防など)づくりに携わっていたことから、自分なりの使命感という面からも、また組織が与えてくれる機会や役割といった面からも、当然かもしれません。


 ところが、自分の意思(Will)やできること(Can)が、こういった使命感や役割と合致していたかというと、そこは疑問が残ります。
 就職活動をして前職を選んだので、当然合致していた部分もあります。ただ、キャリアを重ねるにつれて、図でいうと、MustとWillが重なる面積やMustとCanが重なる面積が小さくなっていったのだと思います。

 

 一方、転職してからは、もともと何がやりたいのかというwill、からスタートして転職先を選んでいますし、Mustについても「チームで構造物を造る」から「チームを創る」ことをサポートする、に意味づけを変えましたし、前職でのマネジメント経験を活かしたいというCanも明らかでした。
 

 社会的な影響という意味ではMustの面積は小さくなったかもしれませんが、自分にとっては、Can/Will/Mustが交差する面積は確実に大きくなりました

 

 是非キャリアに迷ったら、この3つの問いを考えてみてください。

 

短期的な目標のための3つの問い

 将来のキャリアについて考えることは、日々そう機会はありませんが、少し先(1年程度)の目標をたてたり、スキルなどを学ぶための学習目標を立てることは機会があるかもしれません。

 

 その際は、Can/Will/Mustに似た、次のフレームワークを使ってみてください。
 ちなみに、こちらは、私が学んでいる井尻さんのオンラインサロンで教えて頂いたことです。(井尻さんのサロン: https://jun-ijiri.com/online-salon0/

 注:この3つの問いを「短期的な目標のため」としたのは私なりの解釈です 

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①自分は何が得意か
②自分は一体何をやりたいのか
この2つの問いは、シャインと一緒ですが、3つ目が異なります。
③世の中では何が求められているのか

 

 シャインの問いは全て自己の内面に向かっての問いであり、自己イメージを固めるものでしたが、井尻さんのご提案での③は、外部的な視点が入っています。

 長期的にみれば自己の内面と対話することは大事ですが、もう少し短期的なことを考えるのであれば、③を考えることは、学習効果を高めるという観点から、もしくは自己の価値を高めるという観点から、極めて有効だと感じました。

 

 皆さんも是非やってみてください。

 

 

参考:働くひとのためのキャリア・デザイン 著:金井壽宏

 

組織の多様性が増すと、、、

 

 多様性、大切ですよね。


 「人はそれぞれ、容姿や価値観などが異なる」ということを受け入れていくことは、自分も他人も「自由」に生きていくうえで重要です。

 

 そして、多様性は職場にも生じてきています。

 

 

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出典:Gerd AltmannによるPixabayからの画像 

 

 「職場の多様化」とは、「職場のメンバーの働き方、雇用形態、考え方が一様ではなく、多様になってきていること」※1です。

 確かに、新卒一括採用だけでなく中途採用も増えてきましたし、非正規雇用も増えてきていますし、フレックスタイムやテレワークなども増えてきています。結果として、一つの組織の中に、多様な価値観を持つ人が増えてきています。

 

 ビジネスの上で、組織が多様性を確保する理由としては、差別の撤廃と言った面もありますが、創造力の向上という面も大きいように思います。

 創造力とは、0から1を作り出す力であったり、1+1を2ではなく3や5にするような今までにない組み合わせを生み出す力だといえます。型にはめるのではなく、型を外すことともいえます。

 

 とするならば、当然多様性が高い方が、創造力は上がることとなります。

 なぜなら、いろんな意見や考えを持った人がたくさんいるからです。

 

 ところが、この多様性は、組織にとっては「遠心力」として働くことになります。

  

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出典: 中原淳、中村和彦 「組織開発の探求」 一部改

 

 それはそうですよね。

 みんないろんな考えがあるのですから、上層部が「こうしよう」といっても「いやそうじゃない」といった反対意見がたくさん出てくることになるからです。

 

 多様性が高まれば高まるほど、この遠心力が大きくなります。

 

 組織とは、「ある目標や意図を持って何らかの活動をしている人々の集合体」※2です。
 目標や意図をすり合わせなければ組織としての力が発揮できません。

 多様性が増すと、この目標や意図のすり合わせが非常に難しくなるのです。

 

 この多様性ですが、ITの進歩とともに今後ますます加速していくでしょう。

 身の回りを見ても、youtubeなど、個人の好みに合わせたコンテンツの提供が進んでいます。
 SNSを使えば、会社と言う組織の外に、たくさんのつながりが簡単に作れます。

 折しも、コロナ禍でテレワークが進んできており、会社(組織)は、職場に来ていないメンバーを完全に把握することは困難になりつつあります。

 

 組織としてまとまって動く、つまり組織であることのメリットを十分に生かすには、「遠心力」に対する「求心力」が必要です。

 

 ここで難しいのは、多様性を殺してしまっては意味がないということです。

 会社が「求心力」として管理や統制を効かせようとしたのでは、何のために多様性を推進してきたのかが分からなくなってしまいます。
 加えて、今後は、管理や統制という名の「求心力」は、メンバーから嫌われる原因となりかねません。

 

 最近改めて事業の目的や、ビジョン、ミッション、バリュー、さらにはパーパスなどが脚光を浴びていますが、「何のために働くのか」という『目的』は「求心力」の大きな一つとなりうるでしょう。

 

 何が「求心力」となりうるのかは、別の機会に述べたいと思いますが、その鍵は「モチベーション」にあると考えています。

 

 そして、私のイメージする理想の組織は、ブログ冒頭の図のように、多様性による遠心力の勢いを殺さず、むしろ加速しつつも少しずつ中心部に向かって向きを変えて「求心力」となり、それが螺旋を描いてどんどんと高みに上っていくというものです。

 自分の興味や関心を大切にして、組織の外とも自由に広く交流を持ちつつも、自分にとっても重要なこの目的を達成するためには、このメンバーとでないとという感じで組織に戻ってくるという感じです。

 

 「いつでも転職できるような人間が、それでも転職しない会社、それが最強だ」※3とも言えます。

 そんな組織作りを目指していきたいです。

 

 


出典:
※1 中原淳、中村和彦 「組織開発の探求」
※2 中村和彦 「入門 組織開発」
※3 北野唯我 「転職の思考法」

 

楽しく仕事をするには

 久々のブログです。

 

 今年は4月に転職し、コロナ禍の中にもかかわらず、楽しく忙しく仕事をさせていただきました。クライアントはじめ、お世話になった方々、本当にありがとうございました!

 

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出典:winterseitlerによるPixabayからの画像

 

 20年前、新人として働いていた時、上司から「楽しく仕事をしよう!」と言われましたが、その当時は「楽しくなんて無理だろ。仕事は辛いものだろ。」と心の中で思っていました。

 ただ、それでも「楽しく仕事できたらいいな」という思いは残り、その後管理職になったりする中で、「楽しく仕事する」にはどうしたら良いか、というのを折に触れて考えていました。

 

 そこで、個人的に考えた、「楽しく仕事をする」ための条件を列挙してみました。

 

1.挨拶しよう
 挨拶は、その人の存在を認めている、という最も基本的な「承認」行為だと思っています。「承認」というと、「褒める」ということが浮かぶかもしれませんが、成功したという結果にかかわらず、結果に至る過程での努力の有無にかかわらず、まずその場にいるということを認めてあげることが大切だと思います。
 その承認の証が、挨拶です。しっかり相手の眼を見て、「おはよう」や「ありがとう」と言いたいものです。

 

2.なんのための仕事かを考えよう・伝えよう
 以前職場で働き方改革をやった時、部下達からは言われたのは「残業してもいい。ただ、何のためなのか分からない仕事はやってられない!」ということでした。
 そして、自分自身も生産性を重視しているため、新人のころから、「この依頼は何のためのものなのか」は常に気になりました。そして「なぜこの上司は目的を言わずに依頼をするのか?」はずっと引っかかっていました。

 

 子供と違い、大人は目的がなければ頑張れません。逆に、目的が分かれば、自分で考えて仕事ができます。
 目的感を持って仕事をすることが、以下に述べる工夫や達成感、そして自律性につながります。

 是非上司の方は、依頼にあたって仕事の目的を伝えるとともに、組織として、そしてチームとして、進むべき方向性を自分自身の言葉で部下に伝えるようにしたいです。

 

3.工夫しよう・工夫できる雰囲気を作ろう
 目的があったとしても、言われたままに仕事をしていたのでは飽きてしまいます。目的が分かっていれば、自然と工夫したくなるはずです。もっと早いやり方はないか、もっとお客様のためになる方法はないか等、考えたいものです。

 

 そして、工夫することを推奨する雰囲気を作りたいものです。

 その際、是非上司はその工夫をしようとしたやる気を認めていただきたいです。工夫は必ずしも成功するとは限りません。むしろ失敗する方が多いでしょう。
 創意工夫を社員に求めるのであれば、何より失敗を受け入れる雰囲気を作るところから始めたいです。

 

4.みんなでやろう
 仕事はチームでやるものです。もともと組織は、1人では達成できない目的のために複数の人が集まってできたものです。役割分担を明確にすることは良いですが、誤った「平等」の名のもとに仕事を押し付けてはいけません。

 どんな人でも、独り職場に残されて仕事をするのは辛いはずです。それぞれがどんな業務をしているかを把握し、「大変そうだね。手伝えることある?」と声を掛けられる職場にしたいです。

 また、人それぞれ強みは異なります。一人一人が自身の強み活かせる分野で頑張ることで、チームとしての意味が出てきます。強みを生かしていきたいです。

 

5.批判より対案を

 ここでの「批判」とは、「建設的な批判」のことではなく、「ただダメ出しをする」ということを指します。

 

 「三人寄れば文殊の知恵」という言葉がありますが、人が集まることのメリットは、対話を通じてアイディアを生み出せることです。

 アイディアを出せる雰囲気を作るために、まずは「どんな意見でも良いよ」というように議論を発散させていくことが重要です。ところが、せっかく意見を言ったのに、ダメ出しばかりする人がいます。「それは以前もやったけどダメだった」「コストがかかりすぎるのではないの」「そんな案は無理だ」などなど。

 建設的な対話にするためには、意見の良いところをまず探し、その上で改善すべきところがあれば指摘し、より良い案を探していくことが必要です。

 批判よりも対案を心がけて、チームで知恵を絞っていきたいです。

 

 「なかなか意見が言えないんだけど、、、」という人もいるかもしれません。そんな時は、まずは同意の意をちゃんと示すことから始めると良いと思います。

 

 ここでの同意を示すとは、自分の頭で考えず安易に同意するということではありません。真剣に考えた結果、たまたま同じ意見になったという場合です。

 また、「『同じ意見です』というような意見しか出せないのであれば、打ち合わせに出る意味はない」という厳しい意見があることは知っています。確かに、プロフェッショナルな人の集まりであったり、それぞれが代表者として意思決定をしようとしている集まりだったりであればそうかもしれません。

 

 そのような打ち合わせではなく、アイディア出しのような集まりであれば、意見を出した人に同意を示すことは、その人にエールを贈ることでもあり、周囲の人にも意見を言いやすくする雰囲気を作ることができます。

 積極的に「同意」を示していきましょう。慣れてきたら、同意する理由を添えたり、ちょっと意見を追加したりして、議論に貢献していきたいです。

 

↓関連する過去のブログ

議論の仕方 - うめさんブログ

 


6.文明の利器を使おう
 コロナ禍をきっかけに、ワークライフバランスやリモートワークなどがぐっと浸透したように思います。コミュニケーションの手段にしても、メールに始まり、chatやビデオ会議など、多様なツールが出てきました。こういったツールはどんどん活用していきたいです。


 前職で支店長をしていた際、「支店長にメールを送るのは失礼だから、直接部屋に行ってお伝えしなければ」なんて雰囲気がありました。いや、お気遣いは分かりますが、メールでいいですよね。「文明の利器を活用してください」と支店長室のドアに張り紙をしたことを覚えています。
 

 新しければ良いということではないですが、業務のプロセスや目的に応じて、便利なツールを柔軟に活用していきたいです。そして、浮いた時間を3.で述べた工夫する時間や、次の7.で述べる成長や育成の時間、8.休む時間に当てたいです。

 

7.成長しよう・成長できる環境を整えよう
 仕事を通じて成長できること、それは大きな喜びです。

 同じ仕事をしていても、だんだん早くできるようになる。今までより責任ある仕事を任される。新たな仲間ができるのも成長と言えるかもしれません。

 仕事の目的をしっかり押さえ、工夫し、様々人と仕事をし、(次に述べますが)仕事以外のことも楽しむことで成長していきたいものです。

 

 そして、上司の方々は成長できる環境を整えていただきたいです。リーダーの役割が、継続的に目的を達成することであるならば、部下の育成は必須です。何もしなくても成長していける部下もいますが、上司のかかわりがその成長を大きく左右します。

 いつもできる仕事ばかりしている部下には、チャレンジングな仕事を与え、そしてフィードバックをこまめに行うことで、大きく成長させることができます。

 一方で、チャレンジングの域を超え、パニックなってしまうような難しい領域には部下を追い込まないようにしたいものです。


8.休みを取ろう・取れる雰囲気を作ろう
 労働基準法も改正され残業規制が厳しくなり、有給取得も義務化されました。
 これらは、もちろん健康を害さない、また自分や家族との時間を大切にするためのものですが、私としてはアイディアを生むためには休みは必須だと思っています。

 

 目の前の仕事を集中的にやり考え続けるだけでは、アイディアは出てきません。仕事から少し離れ、いつもと違う人や事に触れ、そしてふっとリラックスした瞬間に生まれるものです。

 

 そして、休みを取るには組織的なバックアップが必要です。

 前職でも、上司から「休みを取るように」と何度も言われましたが、若手ほど休めないものです。「上司に言われたから仕事をしているのに、同時に休めと言われても困る」と内心思っていました。

 上司は自分で仕事をコントロールできます。そしてその仕事を部下に任せることができます。でも、部下は、いつも仕事は降ってくるものです。また上司の側から言っていただけない限りなかなか上司に仕事を任せて休むというのはできません。

 是非上司の方から休みを取れる雰囲気を作っていただきたいです。

 

 

 最後に、「2.何のために仕事をするのか」に関連して、自分なりのVision・Mission・Valuesを考えてみました。


Vision:誰もが強みを生かして楽しく仕事できる環境を創る
Mission:マネジメントの楽しさを伝える
Values:リアルな現場と科学的な理論・手法の両方を大切する。個を通じて組織課題を探究する。自らもクライアントや周囲から学び、成長し続ける。

 

 さて、来年はいよいよコンサルタント2年目になります。自分の年齢に焦らず、「守破離」の「守」を徹底しつつ、前職の経験を活かして少しずつ「破」を増やしていきたいなと思います。

 

在宅時代の進捗管理

 少し前ですが、あるプロジェクトにアサインされ、1週間(月曜~金曜)で成果を出すことになりました。ただ、チームは全員在宅です。
 
 結構効率的な仕事をさせてもらえたので、紹介します。
 

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1.発端は自分から
 私に割り当てられた作業は、全く自分が経験したことのないものでした。
 しかも、随時メールや電話、zoomで、上司に相談はできるとは言え、基本的には私一人家でひたすら1週間作業するというものでした。
 
 不安でした。
 
 何が不安かと言うと、見当違いの方向に作業を進めてしまい、締め切りである1週間後の金曜18時に提出したものが、全く役に立たないものになってしまうかもしれないということです。
 
 そこで、自分もかつては管理職をやっていたので、上司の目線に立って、上述のような事態はなんとしても避けなければならないと思い、以下のようにすることにしました。
 
  • まず、作業初日の月曜朝一に上司に連絡し、2日目の火曜朝一にzoomミーティングをしてもらうことに。
  • ミーティングの議題は、「金曜に提出する最終成果品のイメージ」及び「1つのタスクの完成イメージについて」
 補足:今回の自分の担当は、20個ほどの似たようなタスクがあり、それらの整合を図ったものが最終成果品となるというものでした。
 
 ここでの目的は、「作業全体の方向性」及び「1つのタスクの成果(量や質)」について確認しておくことです。
 
 ちなみに、ミーティングを先にセットしたのは、タイムマネジメントでもあり、上司を安心させるためでもあり、自分を追い込むためでもあります。
 メールではなくzoomとしてもらったのも、ニュアンス含め、いろいろと確認したかったからです。
 
 
 
2.上司からの指示
 上記の申し出に、上司はこころよく応じてくださり、以下のような条件が出されました。
  • 残業はしてはいけない。
  • 毎日18時時点の成果をメールで提出。
 
 ちなみに、その上司の方はものすごく朝早く仕事をするタイプの方だったので、私がその日の報告を夕方にすると、私が作業を開始する翌日の朝一(9時)には、返事が返ってきていました。
 
 
3.進捗管理
 残業してはいけない中で、毎日夕方に進捗報告して、翌朝には指示が来るというサイクルは、ちょっときつかったですが、日中は一心不乱に作業ができました。
 
 さらに、私の方で、毎日18時のメールにて、その日の成果に加え、「翌日の作業予定」も報告することにしました。
 
 すると翌朝上司からのメールには、前日の成果へのアドバイスに加えて、「今日のタスクは自分でも〇時間ぐらいかかるから、頑張ってね」とか「今日中にはこの辺まで終わらせられるのではないか?」とか「これぐらいまで行けたらすごいよ」と、頑張ったら届くかもしれないぎりぎりのラインを狙って指示が来ました。
 
 これは、ちょっとスリルがありました。
 なぜなら残業できないので、決められた時間の中での「質と量」が試されており、それを達成できないとなると、「能力が足りない」と思われるのではと思ったからです。
 
 一方で、上司からは「1週間でやれるところまでやってくれれば、あとは全部自分が何とかするから」と何度もおっしゃっていただいたので、その点は安心でした。
 
 
4.期待値をコントロールする
 この言葉は以前読んだ「コンサル1年目が学ぶこと」(著:大石哲之)に書いてあった言葉ですが、今回非常に役に立ちました。
 
 仕事では常に依頼者の期待値を越えなければなりません。そうでなければ、次の仕事が来ないからです。
 ですが、時間も能力も有限ですので、毎回大きく期待値を超え続けることは無理です。
 
 その点で、今回の仕事を引き受けるかについては、私の方ではちょっと悩みました。
というのも、最初に書いた通り全くやったことがない仕事だったからです。
 せっかく声をかけてもらったのだから2つ返事で仕事を受けるところを、事前に何回かこのプロジェクトで上司となる方と打ち合わせをさせて頂き、作業のイメージを固めるとともに、自分は「これぐらいのことはできそうです」(逆に言うと、「これ以上はできないです」)というところをすり合わせました。
 
 ここで「これぐらいのことはできそうです」という自分の能力のアピールがあまりに低いと仕事がこなくなってしまいますし、一方で、余りに高いと、結果として割り当てられた役割をこなせなかった場合、チームにもクライアントにも迷惑がかかることになります。
 
 求められていることと自分の能力の双方をしっかり把握し、依頼者の期待値をコントロールしなければなりません。
 
 
5.気づき
 今回は単一のプロジェクトに集中できる環境で、かつ、急用が入ることはない環境でしたので、こういった細かな進捗管理が可能であったともいえます。
 
 多くのプロジェクトが並行して走り、また、急用や電話で作業が中断されるようですと、なかなかこうはいかないかもしれません。
 また、そもそも仕事を受ける受けないという選択肢がないことも多いです。
 
 それでも、以下のようなやり方は、在宅勤務の時代、極めて大事なことだと思いました。
 
(事前に)
  • 上司が、どういう目的・内容、いつまでの仕事かを説明する。
  • 部下がそれを踏まえて、どれぐらいできるかを伝える。
(最中には)
  • 上司が、残業無しという条件をきっちり守ったうえで、部下の能力を踏まえて、いつまでにどの程度の仕事を終わらせればよいのかを精度高く予測する。
  • 上司が「こうすると良い」とアドバイスをし、「もっとやれるだろう」と励まし、「あとは任せろ」と安心させてくれる
  • 部下も集中して仕事をして、ちゃんと報告する

 

 そして、作業が終わった後、フィードバックとして、仕事の進め方や出来栄えについてアドバイスも頂けました。

 

(終了後)

  • 上司は、部下にフィードバックを返す

 

 こう記載すると、部下を細かに管理するというイメージがありますが、管理するのはあくまで成果であって、部下には安心して精いっぱいの力を出してもらえるようにする、というのが大切ですね。

 

マネジメントとリーダーシップ

 マネジメントとリーダーシップ、同じような感じで使われることが多いですが、やはり違いがあります。その違いを知ることは、実務上も役立ちます。

 

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1.マネジメントの定義

 マネジメントとは、「個人、集団、及びその他のリソース(設備、資本、技術など)を通して、またはこれらのリソースとともに、組織目標の達成を目指して働く過程」のこと。

 

 あくまで目的は、「組織目標の達成」です。
 そして、何を用いるかいうと、人も含めたリソース、つまり経営資源です。

 

 少し話がそれますが、モノやカネ、情報といった経営資源を使うのは「ヒト」です。マネジメントをちゃんとしようと思ったら、人材育成は欠かせません。
↓関連する過去のブログ
人的資源の特徴 - うめさんブログ

 

 

2.リーダーシップの定義

 一方、リーダーシップとは、「与えられた状況で、目標達成のため、個人や集団に影響を及ぼすコミュニケーションの過程」のこと。

 

 まず、マネジメントの定義と比べると、「コミュニケーション」という言葉が入っているのが特徴的です。
 
 次に、マネジメントの定義と似た言葉として「目標達成のため」という言葉が入っています。ところが、リーダーシップの定義では「組織」という言葉が抜けています

 ということは、どのような目標であっても構わないわけです。リーダー自身の目標を指すかもしれないし、他人の目標を指すかもしれないし、場合によっては組織の目標と逆行するかもしれません。
 
 リーダーシップとは、目標や理由のいかんにかかわりなく、個人や集団に影響を与える試みそのもののことです。

 

 ですから、この定義にのっとれば、かのヒットラーも絶大なるリーダーシップを発揮した人物となります。

 

 

3.マネジメントとリーダーシップの違い

 リーダーシップの研究者であるウォレン・ベニス氏は、以下のようにマネジメントとリーダーシップの違いを述べています。

 

 「リーダーは、敏感で流動的な、しかも模糊とした、また、ときにわれわれの前に立ちはだかり、たじろぐと確実に我々を屈服せしめるような状況の全体を掌握できる人である」

 

 この文章によると、不透明な状況や危機的な状況を打開できる人こそがリーダーです。三国志の曹操を評した「乱世の英雄」に通じるところもありそうです。

 

 ウォレン氏は、続けて、マネージャーとリーダーを以下のように対比しています。

 

  • マネージャーは管理し、リーダーは革新する。
  • マネージャーは写し(コピー)であり、リーダーは原版(オリジナル)である。
  • マネージャーは維持し、リーダーは開発する。
  • マネージャーは体制や構造に着眼し、リーダーは人々や人間に着目する。
  • マネージャーは他人を統制し、リーダーは他人を信服させる。
  • マネージャーの視点は短期的であるが、リーダーは長期的視点に立つ。
  • マネージャーは「いかに」と「いつ」を問題にし、リーダーは「なに」と「なぜ」を問題にする
  • マネージャーは結果を考え、リーダーは未来を展望する。
  • マネージャーは模倣し、リーダーは創造する。
  • マネージャーは現状を受け入れ、リーダーは現状に挑戦する。
  • マネージャーは事を正しく行い、リーダーは正しいことを行う。

 


4.気づき

 このウォレン氏の表現により、マネジメントとリーダーシップの違いが具体的に掴めてきます。

 

 自分自身はどうかと言うと、分析力や判断力、そして計画立案能力はあるが、慎重でやや想像力が足りないため、自然体では上記の「マネージャー」のようなふるまいが多くなります。


 一方、そのことを知っているから、目的(what・why)や長期的な視点を常に意識したり、サーバントリーダーシップと言うリーダーシップのスタイルを用い、周りの力を借りて事を成そうとします。
 
↓関連する過去のブログ:サーバントリーダーシップ

読書メモ② 「新しい経営学」三谷宏治 リーダーシップ - うめさんブログ

 

 人により「マネージャー」と「リーダー」のどちらの特性がより強く現れるかは異なるでしょう。

 

 どちらがいいということではありません。
 求められることが違いますし、実際の仕事では、両方の役割が求められます。

 

 例えば、中期経営計画や年次計画に基づき堅実に成果を出したり、日々の業務を効率化することも求められますし、一方、グローバル企業との競争に打ち勝つことや今回のコロナウイルスのような危機的な状況の中でのかじ取りも求められます。

 

 自分を知り、そして直面した仕事に応じて、マネージャーとしてふるまうのか、リーダーとしてふるまうのかを考えたいです。
 そして、周りの人と協力し、その場においてリーダーが不足しているならリーダーの役割を、マネージャーが不足しているならマネージャーの役割を果せるようになりたいです。

 
 

参考)
ポール ハーシィ (著), デューイ・E. ジョンソン (著), ケネス・H. ブランチャード (著), 入門から応用へ 行動科学の展開【新版】―人的資源の活用 –, 2000/6/30

画像:PixabayからRobert Pastryk作

 

「強みを生かしたい」という思いの原点

 私のモットーは「強みを生かす」です。

 

 この思いのもと、今は人材育成の仕事をしていますが、この思いの原点は前職での経験です。

 

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1.役に立たない課長

 私は入社7年目で支店の課長になりました。優秀だったからというわけではなく、7年目からマネジメントを学ぶというのが会社の育成方針だったからです。

 

 それまでは本社で係長として仕事をしていましたが、基本的には上司の指示をこなすというものでした。

 それがいきなり支店、そして現場の課長となりました。

 

 当然、現場のこともマネジメントのことも知らないことばかりです。

 一方、部下の方々は知識も経験もそして年齢も上の方ばかりです。

 

 困りました。どれだけ遅くまで仕事をしても、知らないことが次々と出てくる。そして判断できない。

 部下の方々が非常に仕事もでき、人格もすばらしく、多々私をサポートしてくれるだけに、自分がチームの役に立っていない、自分が仕事のボトルネックになっていると感じました。

 

 そんな折、社外の人にプロジェクトの説明をしなければならない機会があり、やはりある程度のポストの人でないと失礼だからと言うことで、私が説明することになりました。

 

 もちろん資料は部下が作ってくれ、事前にいろいろと部下に素人のような質問を投げては教えてもらうという形で準備を進めました。

 

 そして説明当日。

 社外の方にプロジェクトの内容を説明しつつ、途中先方からの質問にも答えつつ、なんとか1時間ほどで話し終わりました。

 

 説明が終わって帰ろうとして椅子から立ち上がったとき、社外の方から「いや、こんなに分かりやすく説明頂けたのは初めてでしたよ。今までの説明は難しいことが多かったので、助かりました。」と言われました。

 自分は『そんなに分かりやすかったかな? 着任したばかりだからほめてくれてるのかな?』なんて思いつつも、ちょっと嬉しく思いました。

 そして帰り道、今度は部下から「説明上手いですね。流れもスムーズでしたし、例えとかも分かりやすかったです。やっぱり仕事覚えるの早いですねぇ。」と言われました。

 

 『あれっ、もしかして自分はチームに貢献できたのだろうか!?』と思えた瞬間でした。

 

 部下は仕事を覚えたと言ってくれましたが、実際のところ細かい話は全然分かっていませんでした。

 それでも、自分の知識がなかったことが逆に、素人である社外の方と同じ目線でプロジェクトを見ることができ、その目線で説明ができたのが良かったようです。

 思えば、自分は昔から説明することは好きでした。

 

 また、自分は昔から、全体像を把握するのが得意でした。例えば、本を読んでいても全体構成が気になって、目次を見つつ全体の中のどこを自分は読んでいるのかとか、この章が全体の中で果たしている役割は何かというのを考えていました。

 

 さらに、本社にいた際、いわゆるロジカルシンキングのような指導をたくさん受けていました。なぜこういう結論に至るのか、この施策をするとどうなるのか等、多々ご指導いただきました。

 

 つまり、「素人目線でチェックし、全体像を押さえつつ、ロジカルに判断すること」なら自分は得意だし、チームの役に立てると確信しました。

 

 もちろん専門のことや現場のことは引き続き覚えていきました。そういった専門的な事実やデータ、現場で起きていることが、プロジェクトの根幹ですから。

 でもやっぱり部下には追い付けないのです。知識や経験の厚みが違いますし、自分は課長としてマネジメント業務もしなくてはならないので、差は開く一方です。

 

 それでも、「素人目線でチェックし、全体像を押さえつつ、ロジカルに判断すること」ができるという自分の強みは、非常に役に立ちました。

 

 部下の方々と専門的な議論をしている際に、「もし○○について問われたらどうするの?」「○○の論点が抜けてない?」と見落としていた論点を投げかけることができるようになりました。

 部下から報告を受けた時も、「これってもともと何のためにやっていたのでしたっけ?」とか「このA案でいくとしたら、その後どうなりますか?」と質問することで、気づきを与えられるようになりました。

 

 そして、課長と言うポストの利点として、情報がたくさん集まってくるというものがありますが、この利点と私の強みの相性は極めて良かったです。

 

 なぜなら、たくさんの事例を知ることで、「あれ? 似たような案件なのに、違う基準で判断しているのはなぜだろう?」などと考えられるようになり、様々な視点でのチェックや判断の根拠に触れることができるからです。

 

 このため一層自分の強みが磨かれたような気がします。

 

 

2.こだわりの強い部下

 自分の強みが分かってくると、がぜん人の強みにも興味が湧きました。

 

 そんな折、非常にこだわりの強い部下の方と仕事をしたことがあります。

 ある分野については極めて優秀で、かつ、自分なりのこだわりがあり、その手の仕事ならば人一倍楽しそうに最後まできっちりやるが、余り根拠を示してくれずどんどん進めてしまいがちな方でした。(ちなみに、やり方や判断はほとんど合っていました。)

 逆に、その分野以外の仕事をお願いすると、あからさまに「嫌だなぁ」という顔をする方でした。

 

 そこで、「強みを生かす」という方針のもと、業務分担を変更し、この方のやりたい仕事を業務として任せることにしました。

 

 そして、課長として業務をチェックする必要があるので、例の自分の強みを使って、素人目線で質問して教えてもらうというスタイルをとりました。まぁ、事実知らないことだらけなのは本当でした。

 最初は「そんなことも知らないんですか?」という目で見られましたが、色々と話を伺ううちに、「昔こういう経験をした」とか「これについては自分の経験とこの文献に照らすと、この方法がいいんです」とか、たくさん話してくれるようになりました。

 

 話をしてもらえるようになれば、もう一つの私の強みである、全体像を押さえつつ、ロジカルにチェックすることができるようになり、お互いの力でより良い仕事の成果を出すことに貢献できるようになったように感じました。

 

 この強みに合わせて業務内容を変えることは、成果も出せるし、楽しく働けるのではないか、と思った出来事でした。

 

 もちろん業務内容は変えづらいことが多いです。今回のケースでは、業務内容の変更を受け入れてくれた、その他の部下の方々の理解があってこその部分もあります。

 

 それでも、「他人の強みを見つけ、それを生かす道を考える」ことは、管理職ならば何度も考えトライしなければならないと思います。

 

 

3.強みで弱みを克服する

 最後はまた自分の話を。

 

 自分の強みが分かってくると、同時に、弱みも分かってきます。

 

 例えば、自分はやや「創造力」が足りません。どうしても妥当な案、つまりオーソドックスな案を選んでしまいがちなのです。

 

 世の中の変化が早く、イノベーションが求められる昨今において、どの企業も「創造力」を持つ人材を探しています。そんな中「創造力」が無いのは結構まずいです。

 

 そこで、私は「創造力」を自分の中に求めるのではなく、チームの力を借りることにしました。

 

 例えば、会議においては、その分野における自分の知識のなさをきっかけにして、専門的な知識を持つ各メンバーから意見やアイディアが出しやすい雰囲気を作ります。

 そして出てきたアイディアに、いろいろと素人目線で質問し、各メンバーのアイディアを膨らませたり、組み合わせたりしていきます。

 最後に、論理的に考えて、最も良い案をみんなで探していくという方法を取ることにしました。

 

 結果として、アイディアは私が出したものではありません。それでも、その議論の過程において、私も一定の貢献ができたこととなります。

 あとは、管理職として、「成功したら部下の手柄、失敗したら自分の責任」というところだけ忘れないようにしておけば、「創造力」のあるチームと言えるのではないでしょうか。

 

 

 これからも「強みを生かす」というモットーで誰かのお役に立てればと思います。

 

 

おまけ

 以下、いままで「強み」について書いたブログの一覧です。

 私の経験だけでなく、理論的なことも含まれていますので、ご参考まで。

 強みを伸ばす - うめさんブログ

 強みを知ろう(ストレングスファインダー) - うめさんブログ

 人材育成の落とし穴 - うめさんブログ

 一流の職人の育て方 - うめさんブログ

 

画像:Free-PhotosによるPixabayからの画像

 

 

 

一流の職人の育て方

 自分のモットーは「強みを生かす」です。自分自身も、そしてチームの各メンバーも、それぞれの強みを生かした仕事をして、成果を上げていくことができたらいいなと思っています。

↓関連する過去のブログ

強みを伸ばす - うめさんブログ

 

 ですから、北海道大学の松尾先生の著書「部下の強みを引き出す経験学習リーダーシップ」はとても学びの大きい本でした。

↓関連する過去のブログ(経験学習理論)

人は経験から学ぶのではない - うめさんブログ

経験を活かそう - うめさんブログ

 

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出典:竹中大工道具館  大工道具、ほれぼれしますね

 

1.普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴

 この本の中で、松尾先生は「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」と「育て上手なマネージャーがやっている指導法」について以下の通り述べています。

 

「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」

  • 弱みを克服させることに重点を置き
  • 問題や失敗のみを振り返らせ
  • マネージャーが職場のすべてを仕切っている

 

一方、「育て上手なマネージャーがやっている指導法」

  • 強みを探り、成長ゴールで仕事を意味づけ
  • 失敗だけでなく成功も振り返らせることで、強みを引き出し
  • 中堅社員と連携しながら、思いを共有している

 

 

2.でも成長している人がいる

 ところが、「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」のような指導法をされても、成長し、そして会社の幹部になっている極めて優秀な方もいます。

 

 この点が疑問だったのですが、松尾先生の勉強会に参加し、機会を得たので質問してみました。

 

Q.「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」のような指導法をしても、成長し、そして会社の幹部になっている極めて優秀な方もいるのですが、なぜこの方々は成長できたのでしょうか?

 

A. まず「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」のような指導法というのは、やってはいけない指導法と言うわけではありません。いうなれば、職人を育てるような昔ながらの日本のやり方なのです。

 この指導法をすると、指導を耐え抜いた人は超一流の職人になれます。ところが、生き残れるのはわずか1割から2割で、大部分の人は脱落してしまいます。

 対照的なのが、ドイツの職人の育て方で、強みを活かしたり、マニュアルを作ったりして丁寧に教えます。すると、大多数の人は平均以上に育つのですが、超一流の割合は日本より少なくなります。

 ですから、もちろん本人の努力もありますが、「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」のような指導法を、無事に、もしくは、なんとか生き残った方は、結果として、極めて優秀な人となります。

 

 

 「なるほど!」と思った瞬間でした。

 以前私がいた会社は、まるでふるいにかけるような育成方法をとっていましたが、一握りの一流の職人を育てようとしていたと考えれば腑に落ちます。(注:もちろん仕事内容や組織構造も大きく影響していますが、これは別の機会に述べたいと思います。)

 

 

3.これからは

 組織の目指すところに合わせて、どちらかの指導法を取ったらよいということだとは思いますが、私はこれからはやはり「育て上手なマネージャーがやっている指導法」、つまり「強みを伸ばす指導法」が必要だと考えます。

 それは求められるニーズも多様化し、しかも移り変わりも早くなってきていて、新たなアイディアが求められているからです。

 また、働く人の考えも変わりつつあります。反省ばかりを促され苦手なことをやるのではなく、モチベーション高くそれぞれの強みを生かした方が良いでしょう。

 アイディアを出せる、多様性を活かせるチームを作っていく必要があります。

 

 最後に、松尾先生より頂いたお言葉を。

 「強みを伸ばす指導法は、決して楽な指導法ではありません。マネージャーは部下のことをよく見て、考え、指導法を工夫する必要があります。また、部下も楽なばかりではありません。例えば、成功体験を振り返ることについても、成功したときに『なぜ成功したのか?』と問われ、それについて考え答えを出すことは相当の労力がかかりますし、成功の要因が分かったら『次も成功しろよ』と言われているわけですから。」

 

 「強みを伸ばす指導法」をどうしたら実践できるのか、そして実践する人をどうサポートできるのか、人材育成を専門とする者として考え続けていきたいです。

 

 

参考:

松尾睦、2019.10, 部下の強みを引き出す経験学習リーダーシップ, ダイヤモンド社

画像:竹中大工道具館

https://www.dougukan.jp/exhibition