組織行動論 メモ10 『組織改革の阻害要因』

『組織改革の阻害要因』

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 組織を取り囲む環境は常に変化し続けているので、より良いアウトプットを世の中に提供し続けるために、組織は変化していかなければならない。

「阻害要因」
図は、人が変化を拒む要因を列挙したもの。

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  1. Negative valence of change:変化に対する損得勘定(その変化が自分にとって得か損かを勘案し、損だと判断した場合)
  2. Fear of the unknown:未知への恐怖(その変化によりどのような結果がもたらされるかわからない)
  3. Not-invented-here-syndrome:自分が発案したものではない(他の人が提案した改革案がより優れているとみなされ、自分の自尊心が傷つくのを防ぐために、その改革案を拒む)
  4. Breaking routines:ルーティンが崩れ、新しいことを学ぶのを嫌がる
  5. Incongruent team dynamics:その変化により、築き上げてきたチームワークが乱される
  6. Incongruent organizational systems:組織の既存システムと整合しない


「対応策」
 こういった阻害要因を知ることで、どうすれば改革がうまくいくかが見えてくる。必要性や成果を十分に説明し(Communication)、新しい知識を与え、またそのためのトレーニングの機会を作り(Learning)、その改革プロセスに加わってもらい(Involvement)、変化に伴うストレスを最小限にしてやり(Stress management)、変化により何かを失う場合はそれを補償してやる(Negotiation)必要がある。が、いずれも時間とコストがかかる。そして、これらの全てがうまくいかなかったとき、強制(Coercion)という手段を用いることとなる。

「組織のトップの役割」
 改革のうち、(前回投稿した)組織文化と整合しない、もしくは、組織文化を変えようとする、組織改革が最も困難な改革となる。組織文化を変えようとする場合は、上述の方法に加えて、組織文化の形成に最も大きな影響力を及ぼしている組織のトップの役割が極めて重要となる。そのトップ自身が、改革の必要性を自分自身の言葉と行動で示すことが必要となる。

 今話題の「働き方改革」はこの困難な改革に当てはまるだろう。なぜなら、長く働くことが美徳であると考える従業員の価値観を変えていかなければならないからだ。トップの役割に焦点を当てると、例えば、部下から上がってきた業務改善の提案に対して、トップが「好きにやったらよいよ」と理解を示すだけでは不十分で、トップ自身が自分の言葉で業務改善の必要性を語らないうちは、その業務改善はうまくいかない。

 また、トップ自身が残業していたり、「俺が若い頃はお客様の無理難題を解決するため3日間徹夜した」なんて武勇伝を飲み会で語ろうものなら、全てが瓦解する。

 部下が徹夜して作った資料を見て、トップが「資料の出来栄えではなく、徹夜したことに焦点をあてて褒めてしまう」もしくは「資料の出来栄えが悪くても、徹夜したことをもって許してしまう」という対応をとっていたのでは、全く価値観が変わっていない。

 もちろん、このトップによる言動だけでは、改革はできず、その言動を、組織文化が表面化したものである組織システム(例:社内手続きルール、報奨制度、ITシステム、室内レイアウト等)で担保しなければならないが、トップによる言動が全てのスタートとなる。

 組織改革に取り組む時、トップはその改革が必要だと心底考え、それを自分の言葉で語り、行動で示さなければならない。

参考文献:
McShane, Steven Lattimore (2015). Organizational Behavior: Emerging Knowledge, Global Reality, 7th edition.