なんで勉強しなきゃいけないの?

 うちの子が学校から帰ってくると、一緒に宿題をやるのですが、素直にやるときもあれば、嫌々やるときもあって、「なんで勉強しなきゃいけないの?」と最近よく聞かれます。

 習うことも増え、難しくなり、そして友達との差もついてきていることにうすうす気づいているようです。それが「なんで勉強しなきゃいけないの?」という不満げな質問になっているのかなぁと思ってます。


 自分の友達からの示唆も踏まえて、改めて自分の考えをまとめて、手紙でうちの子に伝えました。

 が、だからといって前向きに勉強してくれるわけではないところが難しいです^^;

 

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○○ちゃんへ

 

 メールありがとう。

 ここのところずっと勉強を頑張っていること、難しくてなかなか解けないでいることは、お父さんも知っています。

 

 学校の勉強は何のためにするのか、少しお父さんの考えを伝えておきます。

 

 まず、学校の勉強だけが勉強ではないです。学校の勉強をやらなくても大人にはなれるし、仕事にもつけるし、人生を楽しめると思います。スケート選手の羽生選手のようなスポーツ選手など、学校の勉強をする時間を他のことに当てて頑張っている人もいます。
 

 次に、学校の勉強の中にも、将来役に立つものと役に立たないものがあります。

 ロケットを作りたいのであれば、算数や理科が理解できなければ作れません。企業の経営者になるのであれば、ある程度の算数は必要だけど、理科はいらないかもしれません。
 さらに、小学校の勉強はまだまだ基礎の基礎です。さっきロケットを作りたいのであれば、算数や理科が必要といったけれども、もっともっと高度な勉強が必要です。中学、高校、大学までやってもまだ不十分で、働き始めてからも勉強が必要です。

 

 すこし話がずれるけど、専門家になるにつれて、勉強の範囲は狭くなるけど、深さはどんどんどんどん深くなります。ただ、世の中は専門家だけではうまくいかず、専門家と専門家をつなぐ人も必要で、そういう人は、勉強の深さは浅いけど、範囲はものすごく広くなります。

 

 お父さんは、勉強は「自分で人生を切り開いていける、自分の人生を楽しむ」ために必要だと思っています。切り開くというとおおげさだけど、人の役に立ってお金を稼ぐことができなければ生きていけないし、やりたいことをして日々を楽しく過ごしたいと思うでしょ。

 

 広い意味での勉強の基礎として、もしくは広い意味での勉強をするための方法を学ぶために、学校の勉強はちょうどいい練習です。
 そして、学校の勉強を通じて、成績が良くて喜ぶとか有名な学校や会社に入るためということではなくて、次のことを学んでほしいなと思っています。



1.学ぶことの楽しさ
 勉強をしていた時に、あることを知ったことによる喜びや問題が解けたことによる喜びは味わったことがあると思います。その単純だけどとても大切な喜びを知ってほしい。
 

 また、誰しも知的な欲求は持っていて、なんでこうなっているのかなといった疑問を持ち、その答えを探していくことの楽しさも知ってほしい。

 社会や理科は暗記系だと言っていたけど、ある程度知識が溜まってくると、それらの知識がつながって、いろいろな仕組みや背景が自分でつかめてきます。(そして結果的にやみくもに暗記することが減るということになります。)
 

 さらに、勉強以外の新しいこと、例えば大好きなゲームキャラクターの作り方とかにもチャレンジしてみて、どんな楽しさがあるのかを探してみてほしい。

 

2.難しいことへの対処の仕方
 難しいなと思ったことを、どうやって乗り越えていくのか、その方法を探してみてほしい。
 

 自分の中のやる気や嫌な気持ちをどう自分でコントロールするのか。難しい問題のその難しさの原因はどこにあるのか、どうやったら大きな困難を自分で解決できるレベルの小さな問題に分解できるのかなど、目の前の困難をどのように分析するのか。どう優先順位をつけ、どういった時間配分とするのか。

 そして、正面から取り組むのか、表面的にだけ取り組むのか、そもそも取り組まないのか、先の状況を考えてどういう解決策を取るのか。といったことを探ってみてほしい。

 

3.勉強の仕方
 学校だけでなく、人生ずっと勉強です。(ここでの勉強は学校の勉強のことだけじゃないよ。)

 自分で目標を立てて、そこから計画をつくり、それに応じた勉強方法(効率が良い方が良い時もあるし、じっくりやった方が良い時もあります。)で勉強をするという、自分に合った勉強の仕方を学校での勉強を通じて見つけてほしい。
 

 また、よく「ググればいいじゃん」と言っているけど、今持っている知識で本当に知りたいことが探せたり、探しだした情報を理解したり、さらにはそれがどの程度確かな情報であるか、判断できるかな? 効率的に勉強するためにも、より深く知るためにも、そして騙されないためにも、基礎的なことを体系的に学ぶやり方を覚えてほしい。

 

4.自分のために、そして誰かのために

 問題は、何がやりたいかですが、簡単に見つかることもあるし、ずっと見つからないこともあります。

 もったいないのは、何かをやろうと思ったときに、準備が整っておらず、そのやりたいことができなくなってしまうことです。(もちろん、その時になってそれに必要な勉強をしても良いですが、間に合うこともあるけど、時間的に難しいということが多いです。)可能性は広げておいてほしい。

 そして、もしやりたいことが見つかったら、他のことは適当にして、それを突き詰めていってみてほしい。

 

 よく「数学なんか何の役に立つんだ。四則演算だけできれば仕事はできる。」と言っている人がいますが、より正確には「数学を知らなければやれない仕事がある。」です。

 以前、ディズニーのアニメを作っている人が講演で、「水の中にいるキャラクターへの光の当たり具合とそれによる影をつくるために、極めて高度な数学と物理と格闘している。」と講演で言っていました。その人が作り上げたプログラミングで、そのアニメのシーンが何倍も魅力的なシーンになっていました。その背景に、数学と物理が隠れているなんて全く思えないほどに。

 

 また、私たちは社会の中で生きています。簡単に言えば、みんなで協力して生活しています。どうやってその社会なるものに参加し、役割を果たし、はたまた騙されないようにするためには、社会の仕組みを知っていくことが必要です。

 歴史は、そういった人々が生きようとして(=仕組みを作ろうとして)いった過程を見ることができます。ある意味、壮大な実験データと言えます。社会では、参加の仕方や義務の果たし方、権利の使い方などがわかるようになります。そういう仕組みを知って、自分のやりたいことを通じて、社会が良くなるのは最高だと思うな。

 


 最後に、今も将来も楽しんでほしい。将来が楽しくなるはずと念仏のように唱えて、毎日ただただつらい勉強ばかりをするのはもったいないです。一方、毎日ゲームばかりやっていて、それで将来も楽しく過ごせるかな?
 

 よく考えてほしいし、考えるとは、昨日メールをくれたみたいに、自分の考えを文章にしてみるということです。自分の考えが見えてこないと文章には書けないからね。
 いつでも相談にはのるし、今書いたようなことを学ぶためのお金は全く惜しくないです。惜しいのは「自分の頭で考えないこと」と「時間」です。

 

お父さんより