舞台としての道路

以前、静岡新聞にコラム掲載の機会を頂きました。行政に携わる中で気づいたことをここにご紹介させて頂きます。

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静岡新聞掲載 2017年1月5日)

 伊豆に来てはや1年半。伊豆といえば、温泉、海、天城越え、わさび…そして、渋滞。渋滞解消のため新たな道路を、という声は大きい。私ども沼津河川国道事務所は、地域のご協力のもと、伊豆縦貫道をはじめとする道路の整備を行っている。しかし、道路の役割は渋滞を解消するというだけのものではない。また、まず道路整備ありきではない。

 

 道路は、「演劇」における「舞台」の役割を果たす。そして「演劇」は、「役者」と「観客」と「舞台」がそろって初めて成功する。「舞台」だけあっても意味がない。
「舞台」の上で芝居や歌を演じる「役者」、そしてそれを見に来てくれる「観客」がいなければ「演劇」は成立しない。伊豆地域では、この「役者」にあたるのが観光業などを営む民間企業、「観客」は観光客、「舞台」は伊豆縦貫道と言えるだろう。

 

 いま伊豆地域には、地域活性化という「演劇」を成功に導くことのできる大きな可能性がある。2015(平成27)年静岡県の観光交流客数は1億4900万人と過去最高を記録し、中でも伊豆北部は県内最高の対前年度比5.8%の伸びを見せた。「役者」が力をつけ、「観客」を呼び込みつつある。
 

 そして2020年のオリンピック・パラリンピックを機に世界中からさらに多くのお客様がくるだろう。川端康成は「伊豆半島全体が一つの大きい公園である。」と述べた。伊豆はやはり周遊してこそ。「役者」のがんばり、「観客」の期待に応えられるよう、「舞台」である伊豆縦貫道をはじめとする道路ネットワークの整備を急ぎたい。