わかりやすい説明

静岡新聞コラム(第3回)です。

わかりやすく説明するというのは本当に難しいです。

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静岡新聞掲載 2017年1月19日)

「わかりやすい説明」

 税金をいわば強制徴収し、権力を行使する行政には「説明責任」が伴う。

  「アカウンタビリティー」とも言われ、「アカウンタビリティーの向上に努めます」というように使われる。

 ただ、この「アカウンタビリティー」という言葉を聞くたびに、矛盾を感じる。とてもではないが、この言葉自体がわかりやすいものではないからだ。このように私たち行政の説明はとかくわかりにくい。

 

 理由の一つは、専門用語を用いてしまうためだ。

  もう一つは、法律を扱う行政官として、さらに科学を扱う技術者として、正確に伝えなければならないと思うからだろう。一言「○○です」と言えば良いところを、「原則として○○です。ただし、○○の場合は○○となります」と言ってしまう。

 

 今の私はある意味広告塔であり、自分の業界以外の方々とお話しさせていただくことが多い。その際は、まず始めに20秒ほどで概要を伝えるための言葉を考える。「一言でいうと、○○です」といった具合に。さらに、「例えると、○○のような感じです」というように、例えを考える。

 この二つに加えるならば、笑顔だと、最近若手から教わった。たとえ相手に分かりづらい言葉を使ったとしても、笑顔で伝えていれば、わからなかった場合に相手が聞き返しやすいからとのこと。学生時代のアルバイトで培ったらしい。

 

 ところが、こういった伝え方以前に、もっと大切なことがある。それは信頼である。私たちの仕事への、組織への、個人への信頼があれば、言葉がいらないことも多い。まずは、一歩一歩この信頼を積み重ねたい。