強みを伸ばす

静岡新聞コラム(第4回)です。
 
個人の強みを伸ばす方が、効率的だし、創造性も高まるし、楽しいと思っています。
ただし、コラムには書いていませんが、マネジメントする側は、工夫が必要です。
 

(静岡新聞 2017年1月26日掲載)
 
「強みを伸ばす」
 
 社会のニーズが多様化・高度化し、またその変化のスピードが増している。民間企業だけでなく、行政も対応していかなければならない。
 
 このような状況の中、完成までに10年、時に30年かかる道路などの社会資本を整備するわれわれ技術者はどうあるべきか。そして、組織はどのような技術力を持つべきか。
 
 「組織の技術力とは、一定水準以上の技術力を持った技術者の人数である」と伺ったことがある。ならば、全ての分野に精通する技術者を育てるよりも、それぞれの分野に強い技術者を育てた方が良いと考えている。
 
 そのためには、個々の強みを生かすことが必要である。人材を育成する際、どうしても自分を基準に考えてしまいがちである。私自身、自分の強みを部下に押し付けたり、部下の弱みばかりを指摘したりしてしまうことがある。
 
 確かに、受験であれば、各科目の上限は100点であり、苦手分野を克服した方が偏差値は上がりやすい。だが、人は、仕事は、違う。個々人の能力に100点という上限はなく、ある人はある分野において200点でも300点でも取れる。そんな人に、その人が苦手で30点しか取れない分野までやってもらう必要はないだろう。その分野が得意な人にやってもらえばよい。仕事はチーム戦なのだから。
 
 目指すべきところがはっきりと一つに定まっている、追いつけ追い越せの時代は終わった。目指すべきところが多様化しているのであれば、われわれも個々の強みを生かして対応していきたい。そして、その方がずっと楽しく仕事できるだろう。