部下のやる気が落ちていたら

 モチベーションに関する理論はいろいろとありますが、その中でも自分が最も気に入っているのがこの「期待理論:expectancy theory」です。
 
 図に示すように、「努力(Effort)が業績(Performance)につながり、それが報酬(Outcome)として報われるとき、人はやる気になるよ」というもの。
 逆に言うと、この努力→業績→報酬の連鎖のどこか1か所が切れても、モチベーションにはつながりません。
 
 例えば、ドラクエとかのゲームで、やる気が湧くのは、「レベル上げをして(努力)、強いボスを倒せば(業績)、貴重な武器が手に入る(報酬)」というのか確実だから。
 
 そして、会社では、次のように使えます。
 
 どうも最近部下のやる気が落ちている。どうしたんだろう?
 
 こんなときはまず、どんな作業をしているのか、どのぐらいの時間作業をしているのか等、努力しているかどうかを確認します。次に、その努力により、売り上げなどの業績が上がっているのかを調べます。もし努力が業績へとつながっていなければ、一緒に仕事をしながらやり方を教えてあげたり(on-the-job training)、研修などのトレーニングが有効です。
 次に、その部下が業績を上げることによりどんな報酬を得たいのかを把握する必要があります。一般的な報酬は給料であるため、業績を報酬へとつなげるには、報酬体系の明確化や公平性を高めることが必要です。
 
 このように、この理論を使うことで、モチベーションを分析でき、対策を見つけることができるのが、私がこの理論を気に入っている理由です。
 
 もう少しこの理論について補足すると、努力と業績のつながり(E-to-P Expectancy)も業績と報酬のつながり(P-to-O Expectancy)も、本人がどう認識しているのか、おそらくこうなるだろうという期待の程度をあらわしています。そのため、例えば、報酬体系を明確化したとしても、組織への信頼がなければ、報酬への期待が高まりません。この期待をどう醸成するのかがなかなか難しいです。
 
 また、努力、業績、報酬の中では、やはりその人が何を報酬として望んでいるのかを把握するのが最も難しいです。というのも、何を報酬ととらえるかは人それぞれだからです。給料といった報酬であれば設計できますが、やりがいみたいなものを報酬としている人に何をもって報いるかはなかなか設計しづらいです。ちなみに、こういったやりがいのような内面的な目標を持っている人こそ最も高い成果を上げます。
 
 さらに、上記の解決策として述べたように、研修の実施や報酬体系の調整など、一部署の管理職の立場では実現できない解決策が必要となることもあります。部下の管理は一義的に管理職の仕事ですが、研修などをつかさどる人事部や、会社全体の業績などをつかさどる戦略部門のサポートが欠かせません。
 
ではでは。
 
参考文献:
McShane, Steven Lattimore (2015). Organizational Behavior: Emerging Knowledge, Global Reality, 7th edition.