狩野川はもう安全か

静岡新聞コラム(第5回)です。

今年は日本全国で災害の多い年でした。
また、狩野川台風から60年の節目の年でした。

そして、狩野川では、狩野川放水路ができて以降、死者・行方不明者ゼロという記録が続いています。
狩野川はもう安全なのでしょうか?

 

静岡新聞 2017年2月2日掲載)
 

 狩野川沿いに暮らす人々にとっては忘れられない災害がある。昭和33年9月26日の狩野川台風である。死者・行方不明者は853名にも及んでいる。
 

 この台風被害を受け、計画を一部変更した上で、建設が推し進められたのが、狩野川放水路である。この放水路は、洪水を狩野川中流から直接海に流すための人口の水路である。この狩野川放水路の効果は大きく、下流への洪水を約半分に減らしてくれている。
 これにより、例えば、鬼怒川などが破堤した一昨年の関東・東北豪雨の際も、狩野川では、下流の水位は約2mも下がり、被害を未然に防いでいる。そして、昭和40年に狩野川放水路が完成して以降、狩野川では死者・行方不明者はゼロという記録が続けられている。
 

 しかし安心してばかりはいられない。データを見ると、実は大きな洪水が起きていないことが主な要因であるとわかる。狩野川台風は、1秒間に約4000立方メートルという量の大洪水であった。一方、近年において被害が発生した平成16年、19年、23年は、それぞれ2100、1700、1600立方メートルと、狩野川台風の半分程度の量の洪水でしかない。
 
 では、どうするか。もちろん、引き続き堤防等のハード対策は必要である。水防活動やハザードマップ等のソフト対策も重要である。だが、対策には時間がかかる。だから今すぐにできる一番の方法は「逃げる」ことである。地元の方々に伺うと、狩野川台風後5年間ぐらいは、雨が降ると聞けば、みんな一目散に逃げたそうだ。是非、命を守るため、積極的に避難していただきたい。