防災イマジネーション

静岡新聞コラム(第6回)です。
 
静岡新聞 2017年2月9日掲載)
 
「防災イマジネーション」
 
 昭和40年に狩野川放水路が完成して以降、狩野川では洪水による死者・行方不明者は出ていない。狩野川台風は、確率的には、約100年に1度しか起こらないという大規模なものであった。100年に1度という規模の洪水は、一度起きたら、その後100年間は起きないというわけではない。もうあのような洪水は起こらないのだろうか。
 
 「狩野川放水路があるから、もう大丈夫ですね」という声を頂くことがある。私どもとしては安心して暮らしていただけるのは嬉しいが、油断はとても怖い。調べたところ、この10年間に狩野川で避難勧告が出されたときに、逃げた人はわずか1%であった。
 
 大学時代の恩師から、「防災イマジネーション」という言葉を最近教えて頂いた。災害が起きた時に、どういったことが起きるかが想像でき、対処できる能力とのこと。
 この能力を発揮するには、まず知識が必要である。狩野川が破堤したら、自分の住むところは何㍍浸水するのか。避難場所はどこにあるのか。まずは一度各市町が作成しているハザードマップをご覧いただきたい。ホームページでも公表されている。
 そして得た知識から想像を膨らませる。朝起きた時、夕方から大雨になるとのニュース。傘を持っていこう。電車が止まるかもしれないから、早めに帰宅しよう。避難所はどこだっただろうか。避難所までの道路のあのガード下は冠水するのでは。独りで住んでいるおばあちゃん大丈夫かな。
 
 こういった想像を働かせ、最後にぜひ行動に移してほしい。行動を起こすことでしか未来は変えられない。