土木は大雑把?

静岡新聞コラム(第9回)です。
 
静岡新聞 2017年3月2日掲載)
 
 「土木」のイメージとはどんなものだろうか?土ぼこりをかぶった作業員が、巨大な構造物を、力づくで、大ざっぱに造っているように見えるかもしれない。
 
 橋や道路といった土木構造物は、自動車などの工業製品とは大きく異なる。まず、地形などの制約があるため、1品モノである。また、工場の中ではなく、屋外での作業となるため、天候の影響を受ける。さらに、その巨大さゆえの難しさがある。
 
 例えば、橋。通常、橋脚という橋の脚の部分を二つ造り、その間にクレーンで橋げたを釣り上げて渡す。だが、橋脚の設置場所に地形的な制約があったり、クレーンが使えなかったりすることがある。
 
 この場合の解決策の一つが、ディビダーク工法、通称ヤジロベエ工法である。その名の通り、まずヤジロベエの胴体にあたる橋脚をつくり、そこから左右バランスをとりながら両腕を伸ばしていくように、人や車が通る部分である橋げたをコンクリートで継ぎ足していくというやり方である。
 しかしこの工法では、橋げたが長くなってくると、だんだん自重で垂れ下がってくる。また、コンクリートが固まる際の気温の影響も受ける。そのため、これらを設計段階で盛り込む必要がある。
 
 このように工法や設計に工夫を凝らして準備しても、最後は現場の作業員の手にかかっている。さまざまな制約や刻々と変わる状況の中、大勢の作業員が一致団結して、安全に迅速に緻密に作り上げる。だからこそ、100年という長きにわたって地域を支える土木構造物が出来上がるのである。