プロジェクトチャーター

プロジェクトマネジメント(第2回)です。
 
 プロジェクトを始めるにあたり、まずは「Project Charter(プロジェクトチャーター)」を作り、合意を得ることが必要です。日本語では「プロジェクト憲章」というそうですが、自分としては「プロジェクト骨子」の方がしっくりきます。
 
 プロジェクトチャーター(プロジェクト骨子)とは、「プロジェクトを開始し、プロジェクトマネージャーにプロジェクトの実行のために必要となる様々な資源を使う権限を与えることを、プロジェクトのスポンサーが承認したことを示す文書」ですが、簡単に言うと、みんなが合意したプロジェクトの骨子(概要)です。
 
具体的には、以下の項目を含んだ文書となります。
  • Project title: プロジェクト名
  • Date of authorization: 承認日
  • Project start/finish date: プロジェクト開始日・終了日
  • Project purpose:プロジェクトの目的
  • Measurable project objectives and related success criteria: プロジェクトの目標と成功とみなす基準
  • High-level requirements: 要件
  • High-level project description, boundaries, and key deliverables: プロジェクトの概要、範囲、主要成果物
  • Overall project risk: リスク
  • Summary milestone schedule: 区切りとなるスケジュール
  • Preapproved financial resources: 予算、Business Case(後述)
  • Key stakeholder list: 主要関係者
  • Project approval requirements: プロジェクトが承認された際の要件
  • Project exit criteria: プロジェクトの中止要件
  • Assigned project manager, responsibility, and authority level: プロジェクトマネージャーとその役割
  • Name and authority of the sponsor or other person authorizing the project charter: プロジェクトのスポンサーやプロジェクトを承認した人の名前とサイン
 
 さて、どの項目もプロジェクトの開始時に明確にしておく必要があるものばかりです。このプロジェクトチャーター(プロジェクト骨子)はプロジェクトの開始を宣言する文書なわけですから、その時点までにこれらの項目については十分な議論がなされているはずです。もちろん、どの項目も大まかなものでよく、分量にして数行程度、全ての項目を合わせても2ページほどのもので十分です。もし、プロジェクト開始時にこのプロジェクトチャーター(プロジェクト骨子)の項目がスラスラと埋められないようであれば、調査や議論、合意形成が不足していることになります。
 逆に言えば、プロジェクトの議論をする段階から、このプロジェクトチャーター(プロジェクト骨子)の各項目を念頭に置いて議論をし、さらに決裁等の共通様式に落とし込んでしまえば、もれなく無駄なく議論や合意形成ができるでしょう。
 
 自分の経験上も、例えばプロジェクトの目的は決まっていたものの、成功とみなす基準が議論されておらず、プロジェクトがいつまでたっても終わらないといったことや、主要関係者を抑えていなくて、プロジェクトの途中で合意形成に苦慮したり、リスクについて十分検討されておらず、こんなこと想定してなかったなんてことになったりしました。
 
 また、このプロジェクトチャーター(プロジェクト骨子)は、主要関係者やプロジェクトチームのメンバーが変わったときやプロジェクトが迷走しだしたときに、基本に立ち返るための文書として活用できます。
 
 大きなプロジェクトであればそれなりの時間をかけて作成する必要がありますが、小さなプロジェクト、さらには何か上司から新たなことを企画するよう言われたときなどにも、簡単なプロジェクトチャーターを作っておくと良いと思います。
 

補足:Business Case
 
 「Business Case」とはプロジェクトが儲かるかどうかを分析した資料です。具体的には、ニーズ(必要性)、外部及び内部環境の現状分析、プロジェクトの目的、リスク、 制約条件、対応策財務分析等が含まれます。
 中でも、「対応策」及び「財務分析」が極めて重要です。対応策とはプロジェクトにおいて実際に実行する内容のことですが、ビジネスケースの作成に当たっては、3案(何もしない、最小限の対応、それ以上の対応)を比較することが推奨されています。
 また、「財務分析」では、予算総額だけでなく、年ごとのコストと利益を大まかに予測し、NPV(正味現在価値:将来にわたって得られる利益を現在価値化したものの合計)やIRR(内部収益率:説明省略、すいません)、Payback period(回収期間:投資したコストが何年で回収できるか)を算出します。
 プロジェクトマネジメントのガイドラインPMBOK guide)では、プロジェクトチャーター(プロジェクト骨子)の前に作成するものとなっています。確かに、利益が上がるかどうかは最も重要な判断基準であり、大きなプロジェクトでは、プロジェクトチャーターを作成する前に、これらを検討する必要があります。ただし、小さなプロジェクトであれば、対応策がある程度限られており、コスト面に留意さえすればよい場合も多いので、Business Caseをプロジェクトチャーターに含めてしまってもよいかと思います。
 
 
参照:
Project Management Institute. (2017). A guide to the project management body of knowledge (PMBOK guide) (Sixth ed.). Newtown Square, Pennsylvania: Project Management Institute, Inc.