Project Stakeholder Management(関係者調整)

プロジェクトマネジメント(第3回)です。
 
 プロジェクトを成功させるためには、stakeholder(関係者)の合意をとり、さらに協力してもらうことが必要です。この「Project Stekeholder Management(関係者調整)」は、このブログが参照しているプロジェクトマネジメントのガイドラインPMBOK guide)では最終章に記載されています。これはおそらく、資源管理やコミュニケーション管理、リスク管理といった他の項目と連動するためだと思われますが、私は最も重要であると考えています。なぜなら、関係者調整は
  • プロジェクトは、重要な関係者(スポンサーなど)の要求を満足させなければならず
  • プロジェクトが始まる前から調整が必要であり
  • プロジェクトマネージャーしかできない(他の人に任せられない。正確には、プロジェクトの全体を抑えているプロジェクトマネジャーが起点となって進めなければならない。後述のように、上司や部下の力は借りますが。)
仕事だからです。
 
1.stakeholder(関係者)
 まず、stakeholder(関係者)とは、「プロジェクトに対して良くも悪くも影響を与える人、もしくはプロジェクトによって良くも悪くも影響を受ける人」です。この定義にのっとると、プロジェクトに何らかの形で関係する人はすべて関係者となるわけですが、当然影響力の大きさによって対応を変える必要があります。
 
 例えば、関係者の例を列挙すると、以下の通りです。
 内部関係者
 ・スポンサー(例:代表取締役
 ・トップマネジメント(例:経営陣)
 ・上司
 ・プロジェクトチーム
 ・サポートスタッフ
 ・他部署のマネージャー(人事部門、マーケティング部門等)
 ・他プロジェクトのプロジェクトマネージャー
 ・プロジェクトマネージャーの家族
 外部関係者
 ・スポンサー(銀行など)
 ・顧客
 ・政府/自治体(規制)
 ・政治家
 ・住民
 ・競合他社
 ・マスコミ など
 
 ここで関係者を内部と外部に分けましたが、やはり外部の関係者を優先するべきです。私の経験でも、ついつい顔を合わせることが多く直接の影響力を受ける社内の人、特に自分よりも立場の上の人のことを優先してしまうこともありましたし、プロジェクトマネージャーの大きな役割の一つはそういった社内の調整にあることは事実です。しかしながら、内部関係者はあくまで自分の組織内のことであり、外部に利益をもたらすことで組織は存続していけるのであるため、やはり外部関係者を優先すべきです。
 
2. stakeholder management(関係者調整)
 そして、stakeholder management(関係者調整)の目的は、「関係者を明らかにし、関係者が期待していることを分析し、そして関係者に協力してもらう」ことです。
 そのために、以下のステップを踏みます。
 1)Identify stakeholders(関係者の特定)
 2)Plan stakeholder engagement(関係者のニーズや期待、関心、影響力に基づき、
   それぞれの関係者にどのようなアプローチをとるかについての計画を立てる)
 3)Manage stakeholder engagement(計画に基づき、関係者とコミュニケーション
   をとったり共同してプロジェクトを進める)
 4)Monitor stakeholder engagement(関係者との関係をモニタリングし、計画を
   修正する)
 
 1)Identify stakeholders
 関係者の特定にあたっては、以下の3点をする必要があります。
 ・関係者の情報収集:名前、役職、連絡方法、プロジェクトでの役割、専門知識
 ・関係者の分析・評価:プロジェクトに求めているもの・期待、影響力
 ・関係者の分類:内部/外部、権力(power/興味(interest)/影響力(influence)
 
 分類方法にはいろいろありますが、一例として、power/interest gridと呼ばれるものは下図の通りです。
 
 
 2)Plan stakeholder engagement
 関係者の特定を終えたら、どのように巻き込んでいくかといった計画を立てます。
 一つの方法は、Stakeholder engageent assessment matrixを使うものですが、これは簡単に言うと、プロジェクトに対する各関係者の関わり具合を 現状での関わり具合を、Unaware(無関心) < Resistant(反対) < Neutral(中立) < Supportive(協力的) < Leading(先導)に分類し、将来的にどこまで引き上げるかを考えるというやり方があります。
 
 そして、例えば以下のような計画を立てます。
 補足:この例ではかなり個人的な志向とそれへの対応について書かれていますが、具体的に、プロジェクトのどの部分に関心があって、どのような権力を持ち、プロジェクトにどのような影響を及ぼし、それらを踏まえて、プロジェクトに関する何をどのようにどういった頻度で報告をし、何に力を貸してもらうかとなどまで書く必要があります。
 
 3)Manage stakeholder engagement
 次に、計画に基づき、関係者とコミュニケーションをとったり共同してプロジェクトを進めていきます。
 
 4)Monitor stakeholder engagement
 そして、関係者との関係をモニタリングし、計画を修正していきますが、大切なのは今後活用できるように、関係者との間で問題が起きたらそれを記録に取っておくことです。
 
3.要点
 私の個人的経験を踏まえ、この「stakeholder management(関係者調整)」を学んで、以下の点が重要であると感じました。
 
1)プロジェクトにうまく巻き込み、協力してもらうために、関係者調整を行う。
 私の経験上はリスクを最小限にするために、または反対意見を極力抑えるために関係者調整を行うことが多かったですが、やはり、もっと前向きにプロジェクトに協力してもらえるようにどううまく巻き込むかというところまで考えたいです。
 
2)優先順位をつけ役割分担することが大事
 大きなプロジェクトになればなるほど関係者は膨大になりますが、やはりその影響力等を考慮して優先順位をつける必要があります。そして、プロジェクトマネージャー一人では関係者調整はできないので、上司や部下にも協力してもらう必要があります。例えば、スポンサーである銀行との調整に当たっては、経営陣でなければそもそもスポンサーに会えないでしょうから、経営陣の協力が必要です。
 
3)共有することが大事、ただし情報の共有範囲及び取り扱いには要注意
 上述のように役割分担をすると、関係者についての情報が共有されない危険性があります。例えば、経営陣が重要だと考えていた関係者に対して、その重要度を知らずにぞんざいな対応をとってしまうといったことが起きかねません。
 また、上述の例(TABLE 13-2 Sample stakeholder analysis)の通り、その情報の内容が極めてデリケートな情報を含んでいるため、プロジェクトにかかわる誰に共有するのかについては、きわめて限定的にする必要があります。さらに、この stakeholder management planについては、決してオフィシャルな文書としてはいけません。
 
4)プロジェクトの進捗に伴って修正していくことが大事
 関係者は、プロジェクトの進捗に伴って増えていくでしょうが、プロジェクトの段階や案件の内容によってどの関係者が重要となるかは異なるでしょう。プロジェクトの進捗や案件の内容を踏まえて、関係者の重要度や対応を修正していく必要がありますし、そのためには記録をとっておくことが大切です。
 
 
参照:
Project Management Institute. (2017). A guide to the project management body of knowledge (PMBOK guide) (Sixth ed.). Newtown Square, Pennsylvania: Project Management Institute, Inc.
 
Schwalbe, K. (2015). Information technology project management (Eighth ed.)