転勤で得た力

静岡新聞コラム(第10回)です。

 

静岡新聞 2017年3月9日掲載)

 公務員にもいろいろあるが、大きく国家公務員と地方公務員に、地方公務員はさらに都道府県職員と市町村職員に分けられる。県庁の職員は、自分の県のことに精通し、県のことを最優先に考える必要があり、市役所の職員も同様である。とすると、私たち国家公務員は常に国を意識することとなる。


 国のことをよく知るための一つの方法として、転勤がある。私自身、海外勤務こそないものの、この16年で8回勤務地が変わっている。そして、自分で経験することの重要性を痛感している。言葉としては、その地域の方が言っていることがわかっても、実感を伴ったものとして捉えられないからだ。

 また、異動により、比較する力が身についた。物事を縦に(時系列に)横に(他事例と)比較すると多くのことが見えてくる狩野川のことをよく知るには、狩野川の歴史を学ぶ必要がある。さらに、狩野川だけを見ていても限界があり、次に、信濃川など他の河川との違いを調べることがとても有効である。


 確かに転勤が多いと、一つの分野に精通することは難しく、1知ったからと言ってその道を100知っている人には到底かなわない。それでも、全く知らない0と1は大きく違う。1知っていれば、想像力を働かせて、10や20をイメージできるが、0からはなかなか難しい。
 そしてその想像力は、その地域に根差した市役所、県庁の職員の方々とともに仕事をすることで得られる

 国家公務員としての強みを今の地域のために生かしたい。