読書メモ 「働く大人のための学びの教科書」中原淳

「読書メモ」始めました。

  今年最初の1冊は、中原淳先生の「働く大人のための学びの教科書」です。

 

要点:

大人が効率よく学ぶためには「背伸び」が必要であり、そのための有効な一つの方法は「タフな仕事から」学ぶこと。

 

筆者紹介:

中原先生は東京大学にて「新入社員をはじめとして、経験の浅い人をどのようにして育成すればよいか」「新任の管理職やマネージャーを一人前のリーダーに育て上げるためにはどんなサポートを提供すればよいか」を研究されています。

 

感想:

 若手の人材育成について、自分の経験では、「先輩の背中を見て技を盗め」というある意味ほったらかしの人材育成から「手取り足取り」といっただいぶ手厚い人材育成に変化してきているような気がします。

(もっともほったらかしと表現した昔の人材育成においても、それなりに考えられていて、若手の模範となる上司がいる課や勉強になるプロジェクトをやっている支店に配属するといったことはされていましたが。)

 

 どの本で読んだか忘れてしまいましたが、社内の優秀な人に「何のおかげで自分は成長できましたか?」と聞いたところ、「修羅場」の経験という答えが最も多かったそうです。「修羅場」を乗り越える中で学び、「修羅場」を乗り越えたことが自信となる。

 以前自分の会社の送別会にてご退職される方々の挨拶を伺う機会がありましたが、ほぼ全員の方が「修羅場を乗り越えた経験」を誇りを持って、また楽しそうに語られていました。やはり「修羅場」は重要な場のようです。これを中原先生は「タフな仕事」と表現されています。

 (少し話がずれますが、この問いに対して「研修」という答えが返ってくることはありません。「研修」はあくまで「気づきの場」であり「他者の経験や思考を代理学習する場」だということでしょうか。)
 
 今回の本において、中原先生は、大人が効率よく学ぶための「3つの原理」と「7つの行動」を紹介されていますが、原理①が「背伸びの原理」行動①が「タフな仕事から学ぶ」というものでした。

 

 「背伸び」とは「現在の能力では少し難しさを感じることで、自らがんばったり、他人の助けを借りれば、実現は不可能ではないこと」です。この少し難しいというのがポイントで、難しすぎてはただ単に挫折感だけが生まれてしまいます。

 そして、何をやるかについては、「心の声に従え」とおっしゃっています。決して「世間的にやればいいと言われていること」や「社会的に大切だと言われていること」のように他人の評価に従ったものをやらないことです。なぜなら長続きしないからです。自分の心に従い、「楽しみを感じること」や「感謝されること」にチャレンジすると良いです。

 

 次に「タフな仕事」とは「自分の能力ぎりぎりで全うできるくらいの仕事」ですが、もう一つ条件が付きます。「会社が伸びていく方向に貢献できる前例のない仕事」でなくてはなりません。こういった仕事に挑戦していくことが、より学びの効果を大きくします。

 

 以上を踏まえ、最初の若手の人材育成に話を戻すと、「手取り足取り」と言っても、「若手を甘やかす」もしくは「若手に優しくする」というのではなく、「若手を良く把握し学ぶ環境を整えてやる」ということになるのではないでしょうか。とすると、管理職や育成担当者の役割は重大です。簡単な仕事をやらせるだけではだめで、難しすぎる仕事を与えてもダメです。(そもそも管理職のメインの仕事は課としてのタスクを完遂することが役割なので、できもしない仕事を割り振るのはその意味でも全くダメです。)
 また、前述のタフな仕事の条件を満たすために、会社の方針や戦略を知っていなければなりません。さらに、数少ない面談のチャンスをとらえて、部下が「楽しいと感じていること」や「感謝されること」(=得意なこと)を把握し、その人のキャリアの積み重ねをサポートしていかなくてはなりません。(この辺りは、「キャリアディベロップメント」として大学で学んだので、別の機会に紹介します。)

 

 大人(社会人)は時間がないので、楽しく効率的に学んでいきたいです。最後に、「3つの原理」「7つの行動」を列挙しておきます。もしお時間がありましたら是非原著を読んでみてください。
 
3つの原理:
①背伸びの原理
②振り返りの原理
③つながりの原理

7つの行動:
①タフな仕事から学ぶ
②本を1トン読む
③人から教えられて学ぶ
④越境する
⑤フィードバックをとりに行く
⑥場を作る
⑦教えてみる