主夫を2年やってみて

 主夫を2年やってみました。

 

 約20年働き、仕事は充実していましたが、その一方で慣れてきてしまっていたこともあり、今一度じっくり学ぶ機会が欲しかったのと、何より人生が豊かになるのではと思い、妻の海外赴任を機に、会社から休職の許可を頂き家族四人でテキサス州にやってきたのが2年前。

 今また仕事に復帰しようとしていますが、ここに主夫として気づいたことを紹介します。

 

 改めて思うのは主婦の皆さん大変だなと。仕事と比較して、自分が感じたことは三つです。

 

 1つ目。仲間がいない。

 家事を一緒にやってくれる人がいません。全て自分でやらなくてはなりません。嫌な上司もいませんが、頼れる部下もいません。

 天井の電球を取り替えたりするときに、足場を支えてくれる人がいないといった、物理的に一人しかいなくて困るということもありますが、それ以上に一緒に何かをして、苦労や達成感を共有できる相手がいないというのは寂しいです。何も用事がない日は、一日家にいて、家族以外の誰とも会話をせずという日もありました。

 自分は、土木工事という仕事柄、非常に多くの人の協力を得て、皆で役割分担し、知恵を出し合って、仕事を進めるということが好きな質でしたので、家で一人黙々と作業をするというのは、自由を感じる以上に、寂しいと感じることが多かったです。


 2つ目。日々の成果が小さい。

 成果の小さいことが悪いという意味ではなく、単純に家事の一つ一つで達成できることは小さいという意味です。全て必要なこと、大切なことばかりですが小さいです。

 電球を変えたり、お風呂を洗ったり、買い物に行ったり、子どもたちの学校に提出する書類に記入したり・・・。仕事ですと、多くの人と役割分担してやるため、成果も大きい。特に、私の場合は、その地域の発展を支える道路や、多くの人の命を災害から防ぐためのダムの整備などを行ってきたため、それと比較するとどうしても小さい。

 また、仕事の場合、世の中やお客様という自分以外の誰かに貢献しています。一方、家事の場合、すべて自分のため、もしくは家族、つまり身内のためのものなのです。繰り返しになりますが、大切なことであり、必要なことです。それでも、この成果のスケール感の違いは致し方ないものがあります。

 

 3つ目。ルーティン(繰り返し)が多い。

 あまり日々の変化がありません。毎日六時半に起きて、朝ご飯を作り、子どもたちをバス停まで送り、掃除や洗濯をして、昼ご飯は一人簡単なものを作って食べて、テレビを見て、買い物に行って、子どもたちを迎えに行って、宿題を手伝って、夕飯を作って、片付けをして寝る。(もちろん、勉強をしたり大学に行ったりする日もあります。)ストレスもほとんどありませんが、飽きます。

 また、変化が無いため、能力を強制的にストレッチさせる機会がありません。もちろん、料理一つとっても奥が深く、いくらでもやることはあるのですが、どうしても自分だけのためにそこまで能力を磨いていく気が自分には起こりませんでした。仕事の場合、突発的な事象が発生したり、今までの知見では対処が難しい問題が起きたりして、それを解決しなければなりません。そのために、新たな知識を学んだり、新たな方法を試したりして、自分の能力が強制的にストレッチされることがあったのですが、家事ではあまりそういった機会はありません。

 

 この3つを解決してくれることの一つが、私にとっては子育てでした。(もちろん他にもあります。自治会活動や、PTA、趣味のサークルなども良いかと思います。)

 子供はなにかと一緒にやってくれようとしますし、能力も伸びていきますし、変化もくれます。そして、いずれ社会の役に立ってくれるでしょう。子供に注力しすぎてしまうお母さんがいるのもやむを得ないし、ある時期それはそれで大切なことだと思います。

 自分は大学で経営学、特に人的資源管理を学び、どうしたら従業員をやる気にさせられるのか、従業員の学習効果を高めるためにはどうすべきかといったことを学んだので、その理論を子供たちに試したりしていました。そして、ありがたいことに、なかなかうまくいかず、いい刺激になりました。

 

 私は、周りの主婦の方に比べると、圧倒的に手抜きで、家事よりも大学や趣味に時間を割いている主夫でしたが、それでもいろいろと気づきの多い貴重な経験ができました。また、自分は料理に凝る等、それほど家事にはまるタイプではありませんでしたが、家事をすること自体はあまり苦にならないタイプであることもわかりました。

 

 最後に、主婦・主夫にとって唯一そして最も元気をくれる仲間は、家族です。家族からの協力や感謝があれば、多くのことが解決できます。家族みんなで取り組めれば、大きな達成感が得られ、喧嘩や病気といったトラブルさえも、後々笑って振り返ることができると思います。同時に、やはり仕事でしか得られないことがあるのも確かです。

 4月から仕事に復帰しますが、家族や、仕事でご一緒させていただく仲間に感謝し、主夫も仕事も両方楽しんでいきたいです!