今回の本は、石野雄一さんの「ざっくり分かるファイナンス」です。
1.ファイナンスのイメージ
自分は行政機関で働いているので、ファイナンスなんて無縁だと思っていました。大学で経営学を学んでいるときも、いまいち身が入らず、かつ実体験がなかったので、表面的にしか理解できませんでした。
大学で学ぶ前は、「ファイナンスというのは何となくうまくお金儲けができるもの」なんという失礼な見方をしていて、そして、大学で学んで得られたのは、「お金を調達するのはものすごく大変で、それをどうちゃんとリターンの得られるプロジェクトに投資するかもまた難しい判断だなぁ」というざっくりとした理解でした。
ところが、実際仕事の中でファイナンスに関する言葉が出てくると、意味はなんとなく分かるけど、それだけでは仕事としての判断ができない。特に、なんでそうなるのか、だからどうなるのかといった、全体的なイメージが掴めていないことに気づきました。例えると、物理を学んでいないと、ボールを斜め上前方に投げた時に描くであろうボールの軌道について、なぜそうなるのか、そしてどう飛んでいくのかといったことがイメージできないような感じでした。
2.気づき
この「ざっくり分かるファイナンス」では、ファイナンスとは何か、ファイナンスの知識を使って何をすることができるのかといったことがわかりやすく書かれていました。もちろんこの本では、財務諸表の読み方やお金の時間価値の考え方、CAPMやNPV法などの各種手法といったことの基本も説明してくれていましたが、その辺は多少習ったことを覚えていたので、あくまで全体像を捉えるため、また今後仕事をするにあたってどういう視点にたって考えたらよいのかといったところに重きを置いて読んでみました。
以下に、今後仕事をするうえで頭の隅に置いておきたい考え方を列挙します。特に、「投資家がどう考え、どうみてるのか」につながるものを選んでいます。(多少語尾等を変えたり、簡略化したりと、表現をいじっていますが、すべて図書からの抜粋です。)
- ファイナンスとは、「企業価値の最大化」をはかるための意思決定に役立つツール。
- ファイナンスを用いて、「投資に関する意思決定」「その投資に必要な資金調達に関する意思決定」「運用して得たお金をどう配分するかという意思決定」を行う。
- 会計は「利益」を扱い、ファイナンスは「キャッシュ」を扱う。どの国の会計基準だろうが、経営者の考えがどのようなものであろうが、キャッシュの残高は変わらない。「キャッシュは嘘つかない」
- 会計が扱うのは企業の「過去」の業績。ファイナンスは「未来」の数字、すなわち企業が将来生み出すキャッシュフローを扱う。
- 投資家には、株主と債権者の2種類があるが、両社にとって「いい企業」の定義は異なる。株主は企業の成長性を重視する。よって、有利子負債の増加をある程度許容。一方、債権者は企業の安定性を重視する。よって、有利子負債は増やしてほしくない。
- 資本コストとは、経営者からすればコストだが、株主や債権者からすればリターン。
- 「WACC(資金調達コスト)を下げる」ことこそが、IR(Investor Relation=投資家を対象にした企業の広報活動)のミッション
- WACC(資金調達コスト)を下げるには、投資家のリスク認識をさげること。そのためには、適切な企業情報を適切なタイミングでディスクローズ(公開)する。
- 経営者の使命とは、WACC(資金調達コスト)以上のROIC(事業活動のために投下した資本に対してどれだけリターンを得ることができたかという利回り)を上げることに尽きる。
- 投資家のリスク認識を下げ、ひいてはWACCを下げるためには、結局のところ投資家の信頼を得ることしかない。
- ファイナンスにおける企業価値とは、「投資家にとっての企業価値」
- 「企業価値」とは、「事業価値」と「非事業価値」より計算される。「事業価値」は将来生み出すフリーキャッシュフローを現在価値に割り引くことによって求めることができる。
- 「企業価値」を高めるためには、フリーキャッシュフローを極大化して、WACC (資金調達コスト) をできるだけ下げる。
- 資本構成を考えるにあたっては、事業リスクに見合った資金調達をすることが大切。
- 社会のインフラを担っている企業など、将来のキャッシュフローのバラツキがあまりない、言い換えれば事業リスクの少ない企業の場合、負債を増やしてもよい。
- 投資すべきところがないからといって、余剰資金を現預金で手元に置いておく企業については、株主にしてみれば、「現金で置いておくなら、返してほしい。もっと優良な投資先を見つけるから」ということになる。
3.TO DO
まだまだ理解が足りないところもありますが、今まで行政官として培ってきた価値観に、ファイナンスというツールを使うことによって見えてくるものを融合させるため、以下のことをやってみようと思います。
- 「投資家」の視点に立ってうちの会社を眺めてみる。
- うちの会社が行っている事業の使命と、ファイナンスが求める使命をどう両立させるかを今後の仕事の中で考え続ける。