プロジェクトレコード(プロレコ)

『プロジェクトレコード(通称:プロレコ)』
 
 「人は経験から学ぶのではなく、経験を振り返ることから学ぶ」というのは、世界中の教育に大きな影響を与えたジョン・デューイの言葉です。

人は経験から学ぶのではない - うめさんブログ

 そして、プロジェクトマネジメントの観点からも、あるプロジェクトを実行しているさなかに何が起こったか、どう対処したかを記録していくことは、今取り組んでいるプロジェクトを成功に導くだけでなく、将来のプロジェクトの大きな参考となります。

Knowledge Management (知識の共有) - うめさんブログ

 
 ところが、私の経験上、プロジェクトが終わるとすぐ次のプロジェクトが始まってしまい、なかなかプロジェクトを振り返り、それを形あるものとして蓄積するといったことができていませんでした。
 例えば、当然ながら、プロジェクトの成果品と呼ばれるものは残っているのですが、なぜこう判断したのかといった経緯が分からない。多くの書類が書庫に入っているのだが、探している書類が書庫にあるのかどうかも分からないまま探す。運よくそれらしき書類を見つけても、探している事柄が載っているのかどうか分からないまま探す。共有フォルダのどこにデータが残っているのか分からない。誰か関係者に話を聞こうと思っても、誰が担当だったかがわからない。最近では多くのやり取りは電子メールで行われるので、過去の担当者がメールを残してくれていってはいるものの、量が膨大すぎて探しきれない。
 
 そこで、『プロジェクトレコード(通称:プロレコ)』という様式(下図)を作ってみました。名前もプロジェクトを記録するということで、プロジェクトレコードとし、呼びやすいよう『プロレコ』なんて、略称もつけてみました。

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 この『プロレコ』は、 チームや会社として知識や経験を蓄積することで、今行っているプロジェクトにおいて、過去に起こした同じような失敗を回避したり、より効率的な作業を行ったり、よりよい成果を生み出したり、さらに新たなプロジェクトを生み出したりするためのものです。

 
 具体的には、以下の項目をそれぞれ数行ずつ記載して、全体で1~2枚程度のペーパーを作るというものです。
 
  1. 案件:プロジェクトや案件の名前を記載。
  2. キーワード:プロジェクトの特徴を表すようなキーワードをいくつか記載。
  3. 重要度:重要度を1~5の5段階で表示。
  4. 作成日:このプロレコを作成した日を記載。更新したら、その更新日を追記
  5. 作成者:このプロレコを作成した人の名前を記載。
  6. 開始日:プロジェクトや案件をスタートした日を記載。
  7. 終了日:プロジェクトや案件が終了した日を記載。プロジェクトが途中の場合は、終了させる目標の日を記載。
  8. 関係者:プロジェクトにかかわった人を記載。責任者や深くかかわった人、実際に作業をした人を記載します。また、依頼者には★マークを、最も詳しい人に下線をひきます。
  9. 概要:プロジェクトや案件の概要を記載。
  10. 背景・目的:プロジェクトや案件が始まった背景や目指している(目指していた)目標を記載。
  11. 課題:プロジェクトや案件の目的(10.)を達成するために、解決すべき問題や発生した課題を記載。
  12. 対応:問題や課題(11.)をどのように対処したかを記載。
  13. 気づき:プロジェクトや案件を振り返り、プロジェクトを進めたり案件に対処していく中で、気づいたことを記載。課題を克服するためにどのような工夫をしたのか、どうすればその問題の発生を回避できたのか、今後同様のプロジェクトを行うとき何に気を付けたらよいのか。
  14. データ:プロジェクトや案件に関するデータが入っているフォルダ名やパス、書類を綴じたファイルの名前などを記載。
 
 この『プロレコ』は、プロジェクトの概要をまとめることを目的としています。よって、それぞれの項目を網羅的に、また詳細に記載する必要はないと思っています。詳細は、14.データに記載した個別のデータや書類を見ればよいからです。
 ただし、今取り組んでいるプロジェクトの背景や目的(10.)や課題(11.)、課題に対してどう対処(12.)するのかについては、大まかでよいので、プロジェクトの方向性がぶれないよう、チーム全員が把握しておく必要があります。
 このプロジェクトが終わった後、誰かがこのプロジェクトを振り返ろうとしたとき、いきなり書類の束に埋もれたり、膨大なデータの海に飛び込む前に、プロジェクトの核となるこれらの事項を大まかに把握したうえで、細かい経緯を追っていった方がはるかに理解が早いと思います。
 
 そして、気づき(13.)がこの『プロレコ』において最も重要な部分です。なぜならば「振り返り」を行う部分だからです。可能ならばこの欄はプロジェクトにかかわった関係者(8.)の全員から、2~3個の気づきを書いてもらいたいところです。気づきはアイディアなわけですから、小さいことも大きなことも気楽に記載してもらう方が、集合知としてより有効な気づきが得られるでしょう。また、プロジェクトにかかわった立場によって気づくことも違うでしょう。
 
 本来ならば、ITの力を借りて、この『プロレコ』の入力や共有、検索を容易にしたいところなのですが、まずは試しということで、Wordで様式を作り、うちの部署の共有フォルダに全てのプロレコを放り込んでおいて、エクスプローラーの力を借りて検索する、といった程度の運用をしています。
 
 今、自分の部署では、これは記録しておいた方が良いかなと思ったプロジェクトや案件のみに絞って、『プロレコ』を作り始めています。そして、定期的に課内会議で発表してもらっています。なるべくプロレコ自体の労力を軽減しつつ継続的に行い、今取り組んでいるプロジェクトにおいてより良い成果を生み、かかわった人の経験を振り返ることで関係者の知見を高め、また将来の新たなプロジェクトやそれにかかわる人のためになるよう、取り組んでいってみようと思っています。