こんな大学なら学び続けられるのに

 誰しも授業に出たり研究することに集中できた大学生活の4年間は貴重なものだったのではないでしょうか?

 社会人になると仕事を通じて学ぶこともできますが、同時に、やはりより深くそして最先端の研究成果を得るために、大学での学びも続けたいですよね。

 

 私がアメリカにいた際に学んだヒューストン大学。超名門校というわけではないですが、家から車で15分と子育てとの両立が可能で、自分の英語レベルにも合っていて、何より基礎的なことを丁寧に教えてくれる大学でした。

 そして、社会人にとって学びやすい大学でした。

 ということで、 こんな大学だったら社会人でも学べるし、先生方の負担も減るのではという、ヒューストン大学のシステムを紹介します。

 

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出典:https://blog.uhcl.edu/news/short-takes-04-09-2019

 

1.何と言っても一単位ずつ授業料を払えるのが素晴らしい

 

 日本の大学では、授業料は年間いくらという風に決まっています。そして基本大学は4年間、大学院は2年で卒業することになっています。

 

 ところが、ヒューストン大学(おそらくアメリカの大学)は、1コマ単位で授業料を払います

 例えば、ヒューストン大学の場合、授業料は1単位15万円で、卒業までに14単位必要なので、15万×14単位=合計210万となります。(年間100万ほどなので、日本の私立大学と同じぐらいでしょうか?)

 

 そして、私が在籍していた経営学専攻は1単位取ると、週1回、夜7時~10時が授業でした。

 

 さて、アメリカでは、課長などの管理職(マネージャー)の立場に上がる場合には、経営学修士(MBA)を求められることが多いようです。実際私の周りにも、大体30歳前後の人で、管理職を目指している友達が多かったです。

 そのため、当然全員働いています。そして、昼間は働き、夜は授業をうけて、土日も勉強するという生活になっています。

 

 ここで1単位ずつ取れることの何が良いかと言うと、「仕事の忙しさに合わせて、その学期に取る単位数を調整できる」ということです。

 例えば、今学期は仕事が忙しいから、1単位だけ取って、なんとか水曜だけは仕事を早く終わらせて授業を受けよう。もしくは、今学期は比較的仕事に余裕があるから、2単位取って、月曜と水曜の授業を受けよう、といったことができます。

 さらに、1年間ぐらいは授業を1単位も取らなくても、2~300ドルぐらいの手数料を払えば、学生の身分やメールアドレス、アカウントが保存されます。ですから、図書館を利用できたりもしますし、オンラインシステムを通じて過去に受けた授業の資料にアクセスしたり、メールで教授に質問したりもできます。

 

 そして、卒業するには14単位必要と言うことだけなので、2年間で終わらせなければならないということはありません。また、卒業も春の卒業式と冬の卒業式の2回あります。

 なので、私の周りにも、コツコツ学んで3年間で卒業したという人もいれば、私のように赴任期間の関係で1年半で卒業したという人もいます。

 中でも驚いたのは、一学期に一単位だけとって学び続けているおばあちゃんがいたり、大学時代は工学部で学び、管理職になる前にMBAをとり、その後も物理学の修士を取り、今は数学の修士の取得に向けて勉強しているある航空機メーカーの技術系幹部の方がいたことです。

 

 もし日本の大学でも1単位ずつ学べるのであれば、私も少しずつ自分の専門を深めるべく大学に通い続けたいです。

 

2.ほかにもいろいろなサポートが受けられます

(そして、それにより先生も助かっているはず)

 

 ヒューストン大学には、いろいろと学生の学びをサポートする仕組みがありました。

 

「Math Center」

 Math Centerという数学を教えてくれるセンター。学校内に設置されていて、数学の先生と多くのアルバイトの学生がいます。定期的に、数学の面白さを伝えたりするセミナーをやったりしてくれていましたが、それ以上に、授業の中で数学が分からないために引っかかってしまったら、ここに行けば教えてくれます。

 

 例えば、生産管理の授業の中で統計学が分からなかったりしたら、その授業の先生のところに聞きに行くのではなく、このMath Centerに行くと、センターにいる学生が教えてくれます。

 オンラインで予約する際に、どの科目のどの教授の授業を受けているかも登録するので、その授業を受けたことのある学生が担当となることが多いようです。もちろん、答えを教えてはいけないなどの厳密なルールはあるのですが、非常に助かります。

 たまに、「あれっ、これ昔解けたんだけど忘れちゃったなぁ。明日まで待ってくれる?」なんていうアルバイトの学生もいますが、その辺はご愛嬌と言うことで。

 

「Writing Center」

 Writing Centerという論文の様式をチェックしてくれるセンター。こちらは、学生ではなく専門のスタッフの方が多かったように記憶していますが、論文や宿題のレポートを持っていくと、文法や参考文献の引用方法などをチェックしてくれます。

 

 私の場合は、レポートを書く際、APAスタイルと言う、The American Psychological Association(米国心理学会)が用いている様式を指定されることが多かったのですが、とにかくルールが細かい。

 コンマ(,)やダブルコーテーション(")、セミコロン(;)、コロン(:)の使い方や、参考文献リストの作成方法、Webページの引用方法などが定められているのですが、これをチェックしてくれます。

 レポートの内容が良くても、こういったルールをちゃんと守っていないと減点されてしまうので、詳しい人に見てもらえるのは助かります。

 

「図書館」

 実際に訪れることもありましたが、何よりオンラインで利用することが多かったです。

 キーワードを入れて、宿題に必要な論文を探す。論文によっては会員になっていないと読めない有料論文があるわけですが、大学の図書館経由でアクセスすれば全て無料です。さらに、先ほど紹介したAPAなどの論文スタイルで参考文献リストを自動に作ってくれるシステムなどもありました。

 

「学生センター」

 学生センターでは、大学生活での相談に乗ってくれるのですが、その相談事項の中には勉強の仕方なども入っていて、自分も試しにノートの取り方や試験準備の方法などを教えてもらいました。

 

「留学生センター」

 留学生をサポートしてくれます。留学生同士の交流を促進するためのイベントをしてくれたり、ヒューストン市内の観光を企画してくれたりしていました。

 また、学生一人一人にメンター(主に文学や国際関係を先行している学生)を付けてくれて、毎週1時間ほど面談することができました。私の場合は、週1回、英会話のレッスンだったり、日々の生活の中で疑問に感じたアメリカの事件や風習を教えてもらったり、たまにレポートのチェックなどをしてもらっていました。

 

「オンライン掲示板」

 ヒューストン大学は、オンライン学習に非常に力を入れており、オンラインシステムには定評がありました。

 例えば、自分が受講している授業のスケジュール(授業日、課題提出日、試験日等)、授業で用いられるスライド(PowerPoint)、シラバス、宿題に必要な論文など、すべてオンラインの掲示板に掲載されていました。

 先生とのやりとりもその掲示板を通じてできましたし、授業を取っている生徒同士で質問をしあったり(Yahoo掲示板みたいな感じ)、スカイプのようなシステムで討論したりできました。

 当然宿題のレポートもこのオンラインシステムを通じて提出するのですが、提出すると自動的に大学のデータベースに保管され、人のレポートをコピペしたりといった不正がないかが自動でチェックされます。

 さらに、外部機関との連携で、多少のお金(20~30ドルほど)は必要ですが、試験をオンラインで受けることもできました。

 

 これらのサポートは当然学生のためではあるわけですが、講師陣の労力を大きく軽減し、教えるべき科目の内容に注力できるよう、また研究の時間を確保できるようするものになっていました。

 

 社会人になってからも学び続けられる環境が整うことを切に願います。