ファシリテーション講師のつぶやき

 本ではなく、人(講師)から習うことの利点は、テキストには書かれていないその人なりの考え方を知ることができる点です。

 ということで、先日受けたファシリテーション研修の講師の方の講義中のつぶやきをまとめてみました。また、そのつぶやきから自分の気づいたことを整理してみました。

 

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Yellowstone National Park, Aug. 2017

 

1.『ファシリテーターの腕前が上がれば上がるほど、対立が増える。』

 「対立しないよう、議論がスムーズに展開していくようにするのが、ファシリテーターの腕の見せ所」と思いがちですが、現実は逆です。

 ファシリテートがうまくなると、参加者はどんどん意見を言うようになります。どんどん意見が出てこれば、当然異なる意見も出てきます。つまり、対立が増えます。しかし、この異なる意見こそ、新たなアイディアの源泉であり、異なる意見が出たうえで、それを乗り越えてこそ、議論した結果が確実に実行に移されることとなります。

 ファシリテーターは、対立を恐れてはいけないのです。

 

2.『悪い質問をした時だけでなく、良い質問をした時も、沈黙が訪れる。』

 ファシリテーターは、参加者にいろいろと問いかけをしていきます。

 「朝ご飯を食べましたか?」というような、はい/いいえで答えられる簡単なクローズドクエスチョンも用いますし、「朝ご飯に何を食べましたか?」というような、はい/いいえでは答えられないオープンクエスチョンも用います。

 そして質問により、参加者に意見を出してもらったり、またそれまでの議論を広げたり深めたりするわけです。

 

 ところが、ファシリテーターが、とんちんかんな、もしくは議論の流れに沿っていない質問を参加者に投げつけてしまうと、途端に「沈黙」が訪れます。

 

 ファシリテーターの役割は、「会議の参加者が話すべきことを話しやすくできる場や雰囲気を作ること」ですので、議論が活発に行われていれば、むしろファシリテーターは何もやることがありませんし、邪魔をしてはいけません

 そのため、会議の場に「沈黙」が訪れることに非常に恐怖を感じます。

 ところが、深い思考を促すような良い質問を投げかけた時も、参加者が一様に考え込むため、同じように沈黙が訪れます。ここで、慌てて、「答えづらい質問でしたかね、じゃぁ、こんな質問に変えます。」としてしまわずに、「沈黙」に耐えることが必要です。

 

 ちなみに、コーチングでも相手の「沈黙」を大切に扱います。

 決してせかさず、相手の表情をみつつ、ゆっくり頭の中で10秒数えるぐらい待ちます。すると、相手がいろいろと考えたことを、ぽつりぽつりと話してくれます。即座に返ってくる答えは、いつも考えていたことであり、表面的な回答にすぎないわけです。相手の内側の深いところからでてきた答えにこそ、意味があります。

 

 ファシリテーターは、沈黙を恐れてはいけないのです。

 

3.『「発散」と「収束」を同時に行ってはいけない。』

 議論ではまずいろいろと意見を出してもらう「発散」という段階があります。出てきた発言に対して評価をせずに、どんどんと出してもらうことが、重要です。

 そして、十分に意見が出尽くしたら、つまり「発散」しきったら、今度はそれらの意見をまとめるという「収束」の段階に入ります。

 

 ところが、ファシリテーターはどうしても議論をコントロールしようとしがちです。

 例えば、時間通りに終わらせようとしたり、議論があらぬ方向にいってしまわないようにしたりです。そのためにファシリテーターがいるので、当然議論をコントロールすることは必要なのですが、よくやってしまいがちな間違いは「発散」と「収束」を同時に行ってしまうことです。

 例えば、意見を出したそばから、ダメ出しをしてしまうというものです。

 「○○という案が考えられます。」と意見が出たのに、『それ前もやったけど効果ありませんでしたね。』とか、『それは本筋とは関係ないのでまた後で。』というようにファシリテーターがやってしまう、もしくは他の参加者がダメ出しを言うのを押さえらえないと、だんだんみんな意見を出しづらくなってしまいます。

 

 「発散」と「収束」は同時に行ってはいけません。

 

4.『ファシリテーターが一番の聴き役に。』

  自分の意見を誰にも聴いてもらえていないときほど寂しいものはありません。せっかく意を決して意見を言ったのに、参加者の誰も聴いていない。そうなると、どんどん意見が言いづらくなります。

 そんな時、ファシリテーターが一番の聴き役になる必要があります。ファシリテーターは、参加者の意見を聞きながら、ホワイトボードに書いたり、議論の流れを捉えて次の質問を考えたり、時計を見たりと非常に多くのことをやる必要があるのですが、それでもまずは意見を聴くことから始めなければなりません。

 『人の話を積極的に聴くファシリテーターは、他に欠点があったとしても、それを帳消しにできる』とは、著書「ファシリテーター型リーダーの時代」を書いたフラン・リースの言葉ですが、まさにその通りです。

 

5.『idea出しは、意見が出なくなってからが勝負。』

  議論はアイディア(idea)を出すために行われることも多いですが、そのためには、まず意見をたくさん出してもらうことが必要不可欠です。

 ところが、斬新なアイディアを出すためには、いったん出なくなるところまでアイディアを出した先に進まなければならないとのこと。

 例えば、新しい商品のキャッチフレーズを考えるにあたって、「じゃぁ、まず100個出してみて。」とやってみて、100個出てからが、本当のidea出しになります。

 

 自分にはこういったidea出しのためのファシリテーションの経験は無いですが、これはものすごくファシリテーションが難しいです。こんなファシリテーションもできるようになれるよう、この言葉を書きとどめておきました。

 

 講師のこういった言葉を頭の隅に置き、さらに自分の経験を踏まえ、自分なりの言葉もつくれるようになりたいと思います。