組織の6つの要素

 今年最初のブログは、やはり「組織」の話から。
 
 組織がうまく機能するには、6つの要素をうまくマネジメントしてやる必要があります。
 

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1.ハードな要素
 
 まず、組織には「ハードな側面」と「ソフトな側面」があります。
 「ハードな側面」とは、形があるものや明文化されたものです。
 例えば、戦略(中期計画など)や組織構造、人事制度、社内規則、職務内容、業務手順です。
 
 一方、「ソフトな側面」とは、人の内面や人同士の関係のことであり、目には見えづらく、また日々刻々と変化するものです。
 例えば、モチベーションやリーダーシップ、コミュニケーションの仕方、人間関係、組織文化・風土などです。
 
 6つの要素のうち、ハードな側面に該当する要素は以下の4つです。
 
①目的・戦略
 「目的・戦略」は、その組織は何のためにあるのか、そして、組織が将来どのようなっているのかを示すものです。
 別の言い方をするとビジョン・ミッション・バリューといわれるものです。
注:バリューについては、その中の「行動規範」のような形で明文化されたもの。明文化されてない「組織文化・風土」は⑥に該当します。

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 具体例としては、中期計画などです。有価証券報告書の中にもさらっとですが書かれています。
 
②構造
 「構造」は、仕事をどのように分け、部門や部署をどのように構成するか、人々をどのように配置し、役割を割り当てるかという組織デザイン(組織設計)のことです。
 
 具体例としては、機能別組織(部門を総務、経理、生産などに分ける)や事業部制組織(部門を製品別に分ける)などがあります。
 ピラミッドのような階層型の組織にするのか、フラットな組織にするのかというのも、構造の捉え方の一つです。
 
③業務の手順・技術
 「業務の手順・技術」は、仕事や業務をどのような手順で行うのか、業務プロセスをどのように改善していくのか、効率化していくためにどのような技術を用いるのか、を示すものです。
 
 具体例としては、手順のマニュアル化や、IT・AIの導入による生産性向上などです。
 
④制度(施策)
 「制度(施策)」とは、人々のモチベーションを高め、キャリア形成のために構築した人事制度や施策のことです。
 
 具体例としては、報酬制度、評価制度、研修制度、メンタルヘルス施策などです。
 
 
2.ソフトな要素
  ソフトな側面に該当する要素は次の2つです。
 
⑤人(タレント)
 「人(タレント)」とは、個人の能力・スキル、リーダーシップ、意識やモチベーション、感情や満足度のことです。
 
⑥関係性
 「関係性」とは、コミュニケーションの仕方やお互いの協働性、チームワークのありようのことです。
 
 この関係性は、組織内の様々なレベルがあり、大きなレベルからいうと、組織全体、部門間、部署間、部署内となります。
 
 
3.6つの要素から組織を見てみよう
 これらの6つの要素の視点から眺めると、ここ20年程の組織変革の流れとしては、「ハードな要素の変革」から「ソフトな要素の変革」へと焦点が移りつつあります。
 
 1990年代のバブル崩壊後、日本の企業は落ち込んだ収益を回復させるために、「戦略」の見直しや、組織「構造」のスリム化、IT化やリエンジニアリングによる「業務手順」の効率化、成果主義の導入などの「制度」の変更を行いました。
 
 これはいわば大規模な外科手術を行ったというものです。
 しかし、外科手術だけで人(組織)は健康になるわけではありません。手術後も、漢方を飲んだり、運動したりして、日頃の体質改善が必要になってきます。
 
 この日頃の体質改善が、ソフトな要素である「人」や「関係性」の変革にあたります。
 日々組織の中で行われているコミュニケーションの仕方や個々人のモチベーションなどの人々の意識や行動を変えていく必要があり、今この部分に焦点が当てられつつあります。
 
(ここからは自分が考えたことです。)
 
 さて、この6つの要素ですが、どの要素が一番大事だとか、ハードよりソフトの方が大事だということはありません。それぞれの要素は関係しており、組織の状態に応じてどの要素を改善していくべきか考える必要があります。
 
 例えば、ある組織の業績が上がらないという課題があった時に、それが戦略の不備によるものなのか、非効率な業務のやり方にあるのか、個々のスタッフの能力不足によるものなのか、職場内のぎすぎすした人間関係にあるのかは、よく見極めなければなりません。
  別の例としては、組織として目指すべき方向がはっきりしなければ、どんな優秀なメンバーが揃っていても業績は上がらないでしょうし、逆に立派な戦略があってもメンバーの能力が十分でなければ、やはり業績は上がらないでしょう。
 
 何か問題が起こった時に、これらの組織の6つの要素の視点からチェックしてみることで、どこに問題があるかがわかるでしょう。
 さらに、対策を講じる時も、1つの要素にのみ焦点を当てるのではなく、関連する要素も一緒に対策を講じることで、より効果的な対策となります。
 
 6つの要素について、それぞれの要素に精通するとともに、うまく組み合わせられるようになりたいです。
 
出典:
中村和彦, 2015.5, 入門 組織開発 生き生きと働ける職場をつくる, 光文社