読書メモ② 「新しい経営学」三谷宏治 リーダーシップ

 今回は、三谷宏治先生の「新しい経営学」の第2回目です。

 前回は、「ケイパビリティ」の中の「組織」を取り上げましたが、今回は「ヒト」、特に「リーダーシップ」を取り上げます。

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読書メモ 「新しい経営学」三谷宏治 『リソースよりもオペレーションが先』 - うめさんブログ

 

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1.ヒトに関する研究

 賃金が生産性に影響を及ぼすことを証明したフレデリック・テイラーや、賃金以外の作業場の人間関係等が人のモチベーションに影響を及ぼすことを見いだしたエルトン・メイヨーなどの研究から、次のことが分かっています。

 

 人間関係や賃金 ⇒ モチベーション ⇒ 生産性

 

 生産性を向上させるには、「モチベーション」を高めてやる必要があり、そのためには、良好な人間関係や適正な賃金が必要だということです。

 そして、この人間関係を扱う「人間関係論」には「リーダーシップ」や「組織文化」など様々な分野がありますが、今回は「リーダーシップ」を取り上げます。

 

2.リーダーシップの3類型

 リーダーシップに関する研究は、ざっくり言うと、「成功したリーダーには共通した特別な能力があるのではないか?」という問いに対する答えを見つけようとした特性理論から始まりましたが、結局は「状況によって変わる」という「コンティンジェンシー理論」が今は主流です。

 つまり、

全ての状況に適応する、唯一最善の普遍的リーダーシップは存在せず、リーダーの特性や行動は部下の成熟度や組織の硬直度で変わる

 というものです。

注)組織の硬直度:組織が硬いというのは、役割や所属、上下関係、指揮命令系統がはっきりしていることで、組織が柔らかいとはそれらが曖昧なこと

 

 色々なリーダーシップの型がありますが、まずは次の3つを紹介します。

 ①支配型:カリスマにより部下を絶対的に支配

 ②サーバント(支援)型:部下を支え導く、部下のためにつくす

 ③コラボレーション(共同)型:部下とともに考え働く

 

 ①支配型の例としては、上意下達型の官僚組織や、Appleを復活させたスティーブジョブズなどです。

 「恐怖と熱狂」によって従業員を鼓舞し、組織一丸となって邁進することで大きな成功を上げることも可能ですが、カリスマによる絶対支配は組織に以下の3つの副作用をもたらします。

  • トップの独善化(誰も上に意見ができない)
  • 社員の自律性低下(みんな上を見て動く)
  • 後継者の育成難(カリスマの代わりは務まらないし育たない)

 

 ②サーバント型の例としては、ソリューションビジネスへの転換を成功させてIBMを救ったルイス・ガースナーやサンリオピューロランドを救った小巻亜矢館長がいますが、以下の特徴があります。

(事例の詳細は是非本書をご覧ください。)

 

  • スタイル:自らが先頭に立ち模範を示しつつチームを引っ張っていくのではなく、自分は前面に出ず、チームの力を引き出すことを重視。
  • 意思決定:手続き重視の階層型ではなく、即断即決のフラット型
  • モチベーション:業績目標達成だけでなく、他者(ヒト)をより良く変えること自体に喜びを見いだす

 

 ③コラボレーション型の例としては、新商品が軒並み不発に終わっていたP&Gを救ったアラン・ラフリーがいますが、このリーダーシップの型は、「オープンなネットワーク型の組織・プロセス」をリードするのに有効です。

(事例の詳細は是非本書をご覧ください。)

 

 オープンなネットワーク型の組織・プロセスは、外部の変化に柔軟に対応できますが、とても複雑で、不確実です。すべてを予測し、コントロールすることはできません。

 そんな時、個々の専門性や外部との協力を重視し、複雑性や曖昧さに耐えられる協調型のリーダーシップが必要となのです。

 

 以上、3つの型の他には、ダニエル・ゴールマンが唱えた6つのリーダーシップスタイルがあります。

 その6つとは「ビジョン型」「コーチ型」「仲良し型」「調整型」「率先垂範型」「命令型」です。

(各型の詳細は是非本書をご覧ください。)

 

 この6つの類型は、

  • リーダーの能力が高い・低い
  • チームメンバーの能力が高い・低い
  • チームメンバーのモチベーションが高い・低い
  • チーム内の人間関係が良い・悪い
  • 対処すべき課題が長期的・短期的

 といった様々な条件の組み合わせに対して、どの型が有効かを示しています。

 

 この6つの型を最後に取り上げたのは、最初に述べた「最善のリーダーシップは状況によって変わる」ということを改めて強調したかったため取り上げました。

 

(ここからは自分の意見です。)

 

3.気づき

 「最善のリーダーシップは状況によって変わる」ということを何度も述べましたが、そうはいっても自分自身は独りであり、そんなにたくさんの型を持てませんよね。

 

 そこで、まずは自分が得意な型を見つけるのが良いかと思います。

 管理職経験のある方は、自分の経験を振り返り、どの型に自分が近いかを考えます。

 管理職経験のない方は、今までの上司(管理職)を振り返って、素晴らしいと感じた上司を思い出し、さらにその中から、自分がまねできそうな上司がどの型に近いかを考えます。

 ここで、「自分がまねできそう」と書いたのは、どんなに素晴らしい上司であっても、まねできないスタイルの方もいるからです。特に「カリスマ型」の上司のまねは不可能でしょう。

 

 自分の得意な型を見つけるもう一つの方法は、私が大学院でリーダーシップの授業を取った際の宿題を参考にできます。

 どういう宿題だったかと言うと、自分が持っているリーダーシップに関係する各種特性を評価するというものです。

 詳細も日本語訳も省きますが、以下の各特性について、過去の研究者が作成したアンケートに答え、点数化し、それらの特性から自分がどのリーダーシップの型に合っているかを考えるものでした。

 (EI[感情知能]やX理論・Y理論、性格診断テストのマイヤーズブリックスなどはご存じの方もいらっしゃるかと思います。)

 

  • Leadership Style Survey
  • Leadership-Member Relations Scale
  • Emotional Intelligence Scale
  • Task Structure Scale
  • Position Power Rating Scale
  • Situational Control Scale
  • Tolerance for Ambiguity
  • Motivation Score
  • Goal Orientation
  • Theory X & Theory Y
  • Myers-Briggs

 

 これは宿題として取り組みレポートとして提出しましたが、自分のリーダーシップを考えさせるという、まさに経営学を学んでいる学生思いの宿題であったと思います。

 

 ちなみに、私のリーダーシップの型は、最初の3つの類型で言うと、「やや支配型寄りのサーバント型」です。

 基本は部下が存分に働ける環境を作ろうと心がけている「サーバント型」です。

 ただ、「やや支配型寄り」と書いたのは、別にカリスマがあるというわけではなく、計画を立てたり、分析したり、全体像を把握したりするのが好きな質(たち)だからです。

 

 自分の得意なリーダーシップのスタイルを理解したら、先述したリーダーシップの型の解説を学んだり、自分の経験を振り返って、それがうまく機能する場合と機能しない場合を知っておく必要があります。

 そして、状況に応じて、自分のリーダーシップの型を多少はシフトできるようにしておくと良いかと思います。

 例えば、私はやや支配型寄りなことが分かっているので、例えば、課題への対応が時間的に迫っている時や、自分が得意な案件でかつ部下がやや未熟な場合は、支配型の度合いを少し強めて、チームを引っ張っていくというスタイルをとることができるかもしれない、と考えておくということです。

 

 自分に合ったリーダーシップのスタイルを知り、そして状況に応じて少し違ったスタイルもできるようにしていきたいです。

  

参考:

2019.9., 三谷宏治, 新しい経営学, 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン