上司だったり部下だったり

 自分自身の人事異動を振り返って、面白かったと思うのは、担当→係長→課長補佐→課長というように直線的に役職が上がっていくのではなくて、支店ー支社ー本社を異動する中で、一度上司として管理職を経験しても、また部下に戻ったりした点です。

 

 例えば、自分は、本社の係長から支店の課長へという「部下から上司(管理職)にあがる異動」もしていますが、支社の課長(管理職)から本社の課長補佐へという「上司(管理職)から部下にさがる異動」をし、そのあとさらに支店の支店長へという「部下から上司(しかも上級管理職)にあがる異動」をさせてもらいました。

 

 この異動をすることで、少しずつ管理職としてのマネジメント能力を磨いていくことができるという非常に優れた仕組みなのですが、今回は、私自身が、部下だった頃と上司だった頃感じていたことを振り返り、上司と部下のすれ違いを挙げてみました。

↓関連する過去のブログ

部下の方々に教えてもらったこと - うめさんブログ

 

f:id:umesanx:20200328194837j:plain

Houston Museum of Natural Science, Aug. 2017
 

 

部下:「また課長から無理な指示がきた、、、」

上司:部下をよりレベルアップさせるために、ぎりぎりのところを狙って指示したつもりだった。また自分の頭で考えてほしいと思った。

 そもそも、成果を上げるのが管理職の仕事であり、本当にできない仕事を部下に割り当てて成果が上がらなかったら自分の責任になってしまうので、そんなことはしないはずです。

 

 ただし、レベルアップさせようという意図があるならば、上司は命令するだけでなく、命令した後フォローしなければなりません

 依頼した案件の背景を教えたり、目的を明確にしたり、とっかかりやヒントを与えたり、スケジュール管理を手伝ってあげる必要があります。

 

 

部下:「課長の指示がコロコロ変わる、、、」

上司:部下が持ってくる情報の内容や精度、タイミングが変われば、当然判断も変わる。また部下と上司では同じ案件に対しても気にかけている点(視点)が違う。

 

 ただし、上司の方が情報を多く持っていることも多いので、適切に上司から部下へ情報を伝えなければなりません。また、案件ごとにどういった視点を優先して判断しているのかという判断基準を伝える必要があります。

 例えば、この案件は、万が一の場合事故につながる可能性があるから、コストより安全性を優先するなど。

 

 

部下:「課長が全然話を聴いてくれない、、、」

上司:部下の話が要点を得ない。いきなり背景事情から延々と話し始め、いつまで経っても報告なのか相談なのかも分からない。そして、とにかく忙しいので、つい部下の話をさえぎって、自分が話し始めてしまう。

 

 ただし、まずは部下との信頼関係を築くために聞く姿勢を持つ必要があります。

 また部下の方が自分よりもずっと現場に近いので、一旦話し終わるまで待つことで、自分が見落としていることに気づけることがあります。

 さらに、特に相手が若手であれば、落ち着かせるために部下が用意してきたであろう資料の説明は一通り聞いてあげた方が良いし、最初に「今回は報告かな?相談かな?」と尋ねても良いし、「一言で言うと何かな?」と助け船を出してあげると良いと思います。忙しいならば、「〇分は時間あるよ」と時間を最初に伝えるもの良いです。

 

 

部下:「課長の指摘が細かすぎる。」

   「細かい指摘ばかりで、肝心のことが相談できなかった、、、」

上司:重要な案件について議論をしようとしているのに、部下の持ってきた資料の「てにをは」すら間違っていたり、簡単な事実確認すらしていないようでは、部下の能力に不安を覚え、どんどん指示が細かくなっていってしまう。

 

 ただし、上司は、部下が持ってきた案件に対して、限られた時間の中で何を議論し結論を出さなければならないのかを考え、重要な事項から指摘し、些末な案件は最後に指摘したほうが良いです。

 これは、部下も最初に言われたことから対処してしまうことが多いので、その点を防ぐためでもあります。

 

 例えば、重要な会議に使う資料について部下から相談があったのならば、何をその会議で議論するのかという議題を決めることがまず重要であり、その議題を決めずに「てにをは」や「資料の体裁(文字の大きさや色)」といった些末なことから指摘し始めると、肝心なことにさける時間が無くなってしまいます。

 

部下:「うちの課長はすぐに資料を無くす。」

   「すぐに案件を忘れてしまう。」

上司:ごめんなさい。だんだん年を取ると記憶力も低下してしまうんです。ということもありますが、やはり案件が多く覚えていられないし、資料もどこかに埋もれてしまいます。

 

 そのため、自分は部下だった時、上司に資料を渡したときは、予備を一部取っておいて、同じ資料を要求された際に渡せるようにしていました。

 また上司になったとき、何度も部下に同じ資料をお願いするのが申し訳なくて、クラウド型の情報共有ツールを導入しました。

 

 

 このように、部下と上司の立場を交互に経験し、すれ違いを認識できたことで、部下の立場で感じたことを上司の立場になったときに改善したり、逆に上司の立場で感じたことを部下として改善したりできたのは、人的資源のマネジメントを学ぶ上で、非常に有意義でした。(もちろんまだまだ未熟な点も多くあると思います。)

 

 そして、上に挙げたようなすれ違いは、とかくコミュニケーションが不足していると起こります。

 昔は「俺の背中を見て学べ」「俺の技を盗め」といった指導方法で良かったかもしれませんが、組織内の多様性が増している中、まずは一言二言で良いので、上司の側から言葉を足す必要がありますし、それ以上に部下が上司に尋ねやすい雰囲気を作っていくことが大切だと思います。