テレワークで試されるコミュニケーション力

 コロナウイルスへの対応で、2週間ほどテレワーク(在宅勤務)をしています。

 私自身は、今は管理職ではないのですが、今までの自分の経験を振り返って、このテレワークの状況は中間管理職にとって試練だと思ったので、気づいたことをつづってみました。

 

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出典:pixabay

 

1.従来の私の仕事環境

 テレワークによる影響は、仕事内容、IT環境、そして会社の組織文化によって様々だと思いますので、まずは今までの私の仕事環境を紹介します。

 

 私は、昔ながらの上意下達なピラミッド型の組織で、多くの人と仕事をしてきました。

 

 ですから、職場の状況としては、部長級は個室にいて、課長以下は一つの部屋に課長を筆頭に机が並んでいるという状況です。

 もちろん一人一台はパソコンがありますが、テレワークをするためのモバイルパソコンはほとんどありませんでした。

 そして、仕事で作る資料は、PowerPointやExcel、Wordを使っていました。

 

 コミュニケーションの手段としては、基本メールですが、メールの文面もやや礼儀を重んじるところがあり、さらに上司(特に幹部)にメールを送るのはややためらわれ、基本資料を持って面と向かって説明に伺うというスタイルでした。

 

 上司(特に幹部)の方々は多忙であり、受け取るメールの量も多く、また組織文化的にメールを送るだけと言うのは失礼だということで、上司はメールを見ないこともありうると想定して、メールのやり取りをしていました。

 役職的に同じような立場の人とやり取りするときですら、メールを送ったら必ず電話をするなんてこともしていました。

 

 という状況なので、Slackなどのチャットを使うことはありませんでした。

 

 このメールだけではコミュニケーションが完結しないというのは、私個人は好きではありませんでしたが、メールの量が非常に多く、期限が切羽詰まった急ぎの案件が多く、内容が複雑なこともあるので、やむをえないとは思っていました。

 

 

 もう一つのコミュニケーションの手段は打ち合わせ(ミーティング)です。

 役員会などの非常に格式ばった会議の話はここでは割愛しますが、普段のちょっとした打ち合わせは数多く行われていました。

 

 何か分からないことがあると、課内や他部署の詳しい人のところに行って教えてもらったり、「頭の体操に付き合ってくれる?」なんて声がけして集まった2,3人でアイディア出しをしたり、議論をしたりしていました。

 メールで依頼をしたり依頼を受けた後でも、関係者で集まって簡単なミーティングをやっていました。

 メールとだぶる内容は当然あるのですが、個々人が作業を始める前に、目的を共有したり、作業内容を確認したり、課題(リスク)を挙げたりするというのは、その後の作業をスムーズにするうえで、とても良かったです。

 

 もちろんその中では雑談もあり、「打ち合わせが長いなぁ」と思うことも多々ありましたが、面と向かって意見をざっくばらんに交換しつつ仕事を進める雰囲気は、とても気に入っていました。

 

 

2.察する

 さて、このような状況の中で、私は中間管理職として仕事をしてきたのですが、メールや電話、打ち合わせ以外のところでも、いわゆる「察する」というコミュニケーションを多くとってきました。

 

 例えば、自分の上司に対しても部下に対しても以下のようなことをしていました。

 

  • 相手(=自分の上司や部下)が今どの程度忙しいかを見る。

 例えば、相手が切羽詰まった作業をしていそうなときは、自分が今から話そうとする案件の重要度を鑑みて、それでも声をかけるのか、後にするのかを考える。

 

  • 相手の機嫌を見る。

 例えば、誰しも機嫌が悪い時があり、そんな時に難しい案件を持っていったりはしませんでした。また、機嫌から、相手の体調面の状態や、仕事の進み具合をおしはかったりもしました。

 

  • 相手が電話や打ち合わせで話していることに聞き耳を立てる。

 例えば、上司が電話をしていたら、その上司の話し方でその上司より上の人からかかってきているのか、下の人と話しているのか分かります。

 上司や部下が誰かと打ち合わせしている際中の表情を見れば、難しい案件なのかそうでないのかとか分かりましたし、聞こえてくる単語から自分の仕事に関係するのかや次の展開をどうすればよいか、などを考えていました。

 

・打ち合わせ後や依頼後の相手の表情を見る。

 例えば、打ち合わせ後「やれやれ」という表情を上司がしていたら、自分の対応の何がまずかったのか考えました。

 また、依頼を受けた部下がおもしろくなさそうな顔をしていたら、何かひっかかっていることがあるのかと考えて、依頼の目的を再度明確にするなどのフォローしました。

 部下が席に戻った後、手が動いていなかったら、少し考えてもらった後に、どこから手を付けるかなどについてフォローをしました。

 

 職場という場所にみんなが一堂に会しているから、こういった察するということができていました。

 

 

3.テレワークで試されるコミュニケーション

 さて、以前のブログで、状況にあったコミュニケーションの手段を選ぶことの重要性を紹介しました。

↓関連する過去のブログ

組織行動論 メモ8 『コミュニケーションのためのツールの選び方』 - うめさんブログ

 

 このコミュニケーションの手段を選ぶというのは、職場と言う場所にみんなが一堂に会していたからこそできていたということに、テレワークをしていて気づきました。

 

 逆に言えば、コロナウイルスでテレワーク(在宅勤務)をせざるを得ない今の状況から考えると、選択の余地が無くなってしまいました。

 

 具体的には、zoomなどのTV会議やメール、そして電話、さらにSlackやLineなどのchチャットを使うしかありません。

 そしてそれだけでなく、2.で述べたような同じ空間にいるからできた「察する」ということができなくなりました。

 

 中間管理職の方々は相当仕事がやりにくいのではないでしょうか。

 

 それでも、この「察する」といったことを、限られた手段の中で発揮していかなければなりません。

 コミュニケーションをとっている時以外の姿が見えないからこそ、コミュニケーションをとるわずかな機会に「察する」能力が求められます。

 

 例えば、zoomなどのTV会議での表情の読み取りや、メールやチャットの文面への配慮が求められます。

 

(少し話がずれますが、slackなどのチャットという手段を最大限に生かすには、上司や部下だといった職場の階層が邪魔になるのではと感じています。チャットの手軽さを損ねないようどれだけ部下との距離を縮められるかというのもポイントです。)

 

 コロナウイルスがたとえ終息したとしても、テレワークがますます広がるであろうこれからの時代にいったいどんなコミュニケーションスキルが求められるのかは、私自身もっと勉強していきたいと思っていますが、一つだけ確実に言えることがあります。

 

 それは、

 『今までの職場においてすら(つまりオフラインですら)コミュニケーションが取れなかった人が、今後のオンラインでのコミュニケーションがうまく取れるとは思えない』

 ということです。

 

 まずは、今一度今までの状況においても求められていた傾聴や論理思考などのコミュニケーションスキルが身に付いているのかどうかを振り返り、さらに磨きをかける必要があると思います。

 

 自戒を込めて、最後は少し厳しめに書いてみました。

 

追記:このブログを読んだ友人からの指摘から、「察する」のは当然必須だけど、「(自分の感情や考え、根拠などを)伝える」ということの重要性も増すだろうなと思いました。