察するのにも限界があるから話す

 2週にわたって、「テレワーク(在宅勤務)で試されるコミュニケーション力」について綴ってみました。

 今回は「話す」を取り上げます。

 ※今まで同様、部下を持つ管理職の方を念頭に置いて書いています。

 

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テレワークで試されるコミュニケーション力 - うめさんブログ

察する力をどう伸ばすのか? - うめさんブログ

 

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                             Gerd Altmannさんの作品 pixabayより

 

1.ちゃんと話さないと、、、

 テレワークが始まって以降、ZoomやTeamsを使ってTV会議はできますが、日程調整も必要なので、やはり職場で声をかけたら集まれるという気軽さはありません。

 また会議が終わると、ぶちっと接続を切ってしまうので、会議後の余韻のようなものもありません。

 すると、TV会議の場では、自然と要点だけを手短に話すことになりがちです。

 

 また、目の前に相手がいない時間が多いので、メールでの指示も増えますが、メールにあれこれと長文を書くのは面倒で、つい、やってもらいたいことだけの指示になりがちです。

 

 今までは、職場というところにみんなが集まって働いていて、部下・上司ともに、直接話す時だけでなく、自分以外の人と話している時の言動を見聞きできていたので、「察する」ということが可能でした。

 ところが、テレワークになり、直接対話している時のみしか会話できないとなると、TV会議で手短に話したり、メールで指示だけ出すという「話し方」では、しっかり伝わっていない可能性があります。

 

 例えば、指示が誤って伝わったまま、1週間全く部下の姿を見ることがなく、1週間後のTV会議で進捗状況を聞いたら全く違うことをやっていた、なんていうことも起こりえるかもしれません。

 

 そこで、これからは、今まで以上に、「自分の考えや感情を部下に話す」ということが大切です。

 ※「話す」と書いていますが、口を動かして話すことに加え、メールなどで文字で「伝える」ということも含んでいます。

 

 

2.具体的に何を話すか

 自分の考えや感情を部下に話す、とは具体的に何を話すということなのでしょうか。

 ここでは3つ取り上げました。

 

①他愛のないことを話す

 いわゆる「雑談」をすることが大切です。

 雑談は何か意味のあることを伝えるというよりは、部下との間に話しやすい雰囲気を作るための土壌づくりです。

 

 打ち合わせが始まるちょっとした隙間、例えばみんなが集まりつつある時とか、誰かが資料を配布したりしている時に、「最近家の近所にテイクアウトできるイタリア料理店を見つけたんだよ」とか「だんだん温かくなってきたよね」「最近運動不足で困ってるんだよ」「やっぱり雨だとちょっと気分がどんよりするなぁ」「学校が休みだからって、うちの子は全然勉強しない」といったことを話すというものです。

 

 この雑談で大切なのは、ちょっと自分のことを話す、つまり自己開示をするということです。自己開示というと言葉自体は大げさですが、他人が知らないちょっとした一面を話すことで、他人からは自分自身の知らない一面をフィードバックしてもらえるようになります。つまり、対話が進みます。

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ジョハリの窓 - うめさんブログ

  

 もし部下が雑談にのってきたら、部下の話をしっかり聴いてあげましょう。もちろん、部下が乗ってこなくても、ちょっと気分が和むだけで十分です。

 あくまで自分の発言は場を和ますためのものであり、そのための呼び水にすぎないからです。そこをはき違えて、自分のことだけを延々と話してはいけません。

 

 そして、区切りのいいところで、「さぁ、打ち合わせをしよう!」と前向きに宣言して、打ち合わせに入るといいでしょう。

 

 ポイントは、自分が感じたちょっとしたことを話す、みんなが話に乗れることを話す、自分が感じたことだからと言って誰かの悪口を言ったりはしない、といったところでしょうか。

 

 先日参加したオンライン勉強会で、フリーランスデザイナーの佐藤翔子さんが「オンラインミーティングの予定時間の前後に雑談してよい時間を設ける」というアイディアを紹介されていましたが、とても良いアイディアだと思います。 

 

 

②考えを話す

 考えとは、背景・目的・根拠・判断基準・思いなどのことです。

 

<指示を出す時>

 管理職は、部下にいろいろと指示を出したりする必要があります。

 

 その際、忙しいから、面倒だからと、やることだけを指示していませんか?

 

 なぜこういう依頼にいたったのかという背景や、その依頼をすることでどうしたいのかという目的を伝えずに、「○○をやれ」と解決策だけを言われても部下は動くかもしれません。

 しかし、背景や目的を伝えた方が、やる気が起き、よりよい成果を出してくれるでしょう。

 また、部下自身が、背景や目的を踏まえて考えることで、管理職である自分が言った解決策よりも良い解決策を発案してくれるかもしれません。

 

 悪い例として、「部長がやれと言っているから」という自分より立場が上の人の名前を出して背景や目的に代えてしまう管理職(課長)がいますが、これは仕事をする上で全く参考になりません。

 部長がどういう理由や目的でその依頼を出したのかを聞き出せない課長なのであれば、いない方がましです。

 直接部長とやり取りしたほうが早ですし、間違いがありません。

 

 同じ職場で仕事をしていたのであれば、管理職である課長にかかってきた電話の内容や、課長と部長が話している内容に聞き耳を立てることによって、背景や目的を察することができたかもしれませんが、テレワークでは困難です。

 部下に指示を出す時は、必ず背景や目的を話さなければなりません。

 

 さらに言えば、部下から依頼した成果を受け取ったのなら、その成果がどう役に立ったのかという、事の顛末まで後日部下に話す、というところまでやれると良いでしょう。

 部下としても仕事の意義を感じられたり、また仕事の流れを覚えたりすることができるからです。

 

 

<判断し決断する時>

 管理職は、複数ある案の中から適切なものを選び出し、決断する必要があります。

 その際、なぜその案が良いと考えたのか、さらになぜ実行に移すことにしたのか、その判断基準や決定根拠を部下に話していますか?

 

 部下よりも経験や知識を多く持っている管理職にとっては自明なことであっても、部下には分からないこともあります

 

 

 また、どの観点(例えば、コスト、時間、リスク等)から見ても良いと思われるベストな案があれば判断理由は一目瞭然ですが、ビジネスにおいては、A案はコスト面で優れているけど時間がかかる一方で、B案はすぐに実行可能だけどコストがかかるといったように、甲乙つけ難いことが多くあります。

 そして、それを判断し決定するのが管理職の役目です。

 

 このような時、ただ「A案にする」とだけ言うのではなく、「今回は○○という理由で時間よりもコストを優先するのでA案にする」と伝えなければなりません。

 そうでなければ、部下はA案を選んだということから「コストが一番大事なんだ」と思ってしまい、別の案件において上司がコストより時間を優先した案を選定した場合に、「課長は毎回言うことが変わる。」と混乱してしまうでしょう。

 そして何より、部下の判断力を鍛えることができません。

 

 管理職は、判断基準や決定根拠を話さなければなりません。

 

 

<翻訳する>

 管理職と言っても、組織のトップでないかぎり、自分の上にはさらに管理する人がいるという中間管理職の人がほとんどです。

 その中間管理職の大切な役割の一つに、「翻訳する」というものがあります。

 

 例えば、<指示を出す>の例で示したように、課長である自分よりも立場が上の部長から依頼が来た場合に、部長が話していた理由や目的を部下に分かるように言い換える必要があります。

 また、部長の言葉が足りなかったら、自分の言葉で補ってやる必要があります。

 

 (ただし、言葉を補う場合は、「部長の言葉」と「自分の言葉」を分けて伝える必要があります。「部長は○○と言っていた。ここからは自分の考えだけど△△ということだと思うよ。」)

 

 

 さらに中間管理職が果たすべき「翻訳する」という役割の中に、組織の理念や戦略を現場に分かるように伝えるというものがあります。

 

 経営陣や部長クラスは、現場スタッフとは別の視点で物事を見、そして判断しています。

 経営層の言葉、特に経営陣が集まった会議などの発言をそのまま伝えても、部下にはピンとこないでしょう。部下に分かるよう、自分の言葉で話すことが必要です。

 

 最近参加したオンライン勉強会で、(株)ミミクリデザインの代表 安斎勇樹さんが「無策なトップダウン型「理念浸透」は、組織の創造性を殺すリスクがある 」「理念・戦略が納得されながらも再解釈され続けている状態において組織の創造性が発揮される」と述べられていましたが、まさにこの再解釈をつなぐ鍵を中間管理職がになっています。

 

 私自身が、特にこの翻訳という役割が求められたと感じるのは、一見すると組織の理念や戦略と矛盾するような指示が上から降りてきた時です。

 部下が一様に首を傾げたり、こんなおかしな指示やってられませんよ、という発言が出そうなとき、ちゃんと自分が納得する形で再解釈し、それを部下に自分の言葉で伝えることができるかが試されます。

 (もちろんやっぱりおかしいとなったら、自分の一段上の上司に確認する必要があります。)

 

 

③感情を話す(部下の感情を代弁する)

 この感情を話すというのは、自分がどう感じているのかを伝えるということではあるのですが、部下の感情を代弁するという使い方が良いと思っています。

 

 少し回りくどい言い方をしているのには理由があります。

 上司である自分が今どう感じているのかを冷静に伝えられるのであれば、また「嬉しい」や「楽しい」と言ったポジティブな感情であれば、自分の感情を部下に伝えることは良いと思っています。

 ただ、ここで私が危惧しているのは、「感情を伝えた方が良い」ということをもって、自分の怒りや悔しいというネガティブな思いをそのまま部下にぶつけてしまう人が出てくるのではないか、ということです。

 

 自分の感情をコントロールすることが苦手だと感じていらしゃる方は、ネガティブな感情は話さない、と決めてしまった方が良いかと思います。

 その代わりに、ネガティブな感情を引き起こすこととなった、事実のみを話すということが良いかと思います。

 

 さて、本題の「部下の感情を代弁する」に戻ります。

 

 具体例から説明したほうが分かりやすいでしょう。

 

 部長から無理難題が降ってきて、課長である自分がその依頼を部下に伝えた時、部下が不満な顔をしているとします。

 そんな時、課長である自分から、「実は自分はこの依頼、期限に間に合うかどうか不安なんだよなぁ。」と、部下が思っているであろうことを自分を主語にして話してみます。

 すると部下も「そうなんですよ。実は○○とか△△とかいう課題があって、、、」というように部下も感情を吐き出してくれることがあります。

 

 ここでのポイントは、自分を主語にすることです。

 部下の心をしっかり読めるのであれば、「○○さん(部下の名前)、もしかして期限に間に合うかどうか不安ですか?」と言っても良いかもしれませんが、心を読み間違えた場合、部下の信頼を失います。

 

 その点、自分を主語にしていれば、合っていたら、部下は「課長もおんなじことを思ってたんだ」となるでしょうし、合っていなくても「自分はこう感じたんですよ」と別の感情を話してくれるでしょう。

 どちらの場合も、自分から感情を話したことで、部下も感情を話し始めているところに注目してください。

 

 

 そして、このマイナスの感情を一旦共感したうえで、「○○とか△△とか課題はあるけど、頑張ろう!」とポジティブな感情を伝えます

 もちろん感情だけ伝えて、課題に対処しないというのは問題ですが、ネガティブな感情を共有することで、部下は心が軽くなり動きやすくなります。

 

 管理職として、自分を主語にして部下の感情を代弁することは、必要だと思います。

 

 

3.注意点

 テレワーク(在宅勤務)時代に求められるコミュニケーション力の最後として「自分の考えや感情を部下に話す」というものを取り上げました。

 

 今回取り上げた「話す」というスキルは非常に大切です。

 

 それでも、「聴く」と「話す」はどちらが大切かと問われれば、自分は「聴く」スキルの方が「話す」スキルよりも優先度が高いと考えています。

 部下の考えや感情が分からなければ、チームを創造的にマネジメントできないからです。

 

 手順としては、まず部下の話をしっかり聴き、そこから部下に考えや感情を話してもらい、それを踏まえたうえで、自分の考えや感情を話していくということになります。

 

 コミュニケーション力を磨き、テレワークでも楽しく効率的かつ創造的に働いていけるようにしたいです。