新人研修が終わると、いよいよ配属先でのOJT(On the Job Training)「実地研修」が始まります。
今回は、OJTを効果的にするために、OJT指導員が果すべき役割について、近年の研究成果を紹介します。
鮎壺の滝(黄瀬川)、2019年5月
新入社員が配属されると、その新人の面倒を見る「OJT指導員」を付ける会社が多くあります。
OJT指導員は、上司ではないが同じ職場の先輩だったりすることが最も多いようです。
さて、近年の研究成果から、OJTを効果的にするポイントを紹介します。
ポイント1.指導よりも移譲
OJTでは、新人に「直接的な教育・指導を行う側面」と新人に「責任と仕事の権限を委譲して実際にやらせてみるという側面」があります。
一般にOJTというと、上司や先輩による教育指導と解釈されるわけですが、OJTを受けた新人が自分の能力が伸びたと感じるのは、前者の側面である教えてもらったことではなく、後者の責任を持ってやりたことによるそうです。
つまり、教えてばかりいるではなく、新人ができる範囲の業務内容を考え、そしてその業務の重要性を伝え責任を持ってやりきらせることが、新人本人の自信につながります。
ポイント2.周りを巻き込む
OJTがうまくいっている職場では、OJT指導員だけが新人の面倒を見ているのではなく、OJT指導員が自ら指導を行う一方で、周囲の人々に声かけを行い、OJTに協力するよう働きかけています。
つまり、OJT指導員がなすべきことは、職場メンバー全体で新入社員を育てるという体制づくりをすることです。
周りの協力が得られると、なぜOJTが効果的にいくのかは、以下のように考えられます。
まず新人の立場からすると
- OJT指導員以外に質問できる相手が増えることで、業務における疑問点が解消しやすくなる。
- OJT指導員以外の職場メンバーとの接点があることにより、多様な仕事のやり方を目にする機会が増える
といったことが考えられます。
つまり多様なフィードバックを得られます。
経験するだけでなく、それを振り返ることこそが成長につながります。
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次に、OJT指導員の立場からすると
- OJT指導員は、OJT以外に、自らの業務もやらなくてはならない
- OJT指導員がすべての業務に精通しているわけではない
という事情があり、その点を周りからサポートしてもらえると言ったことが考えられます。
これにより、OJTと自らの仕事のバランスを取り、新人とチャンと向きあい会話する時間を確保することができます。
ただし、注意点が一つあります。
それは、新人にとって過剰な負荷とならないようにすることです。
その点は、OJT指導員が全体的な負荷をコントロールするとともに、経験したことを振り返る時間を作ってあげる必要があります。
■気づき
さて、ここからは自らの経験を振り返りたいと思います。
OJT指導員へのサポートは必須だと、私も思います。
新入社員が配属されることにより、職場が活性化するという良い面がありますが、反面、一時的に生産性は低下します。
その生産性低下のカバーをOJT指導員にのみ求めるのは酷です。
OJT指導員は、指導員に選ばれるだけあって優秀な社員であることが多いでしょう。ということは通常の業務もそれ相応に抱えています。
また、新人の指導には、相当の手間がかかります。
先ほど言った、適切な業務を割り振るということ一つをとっても、工夫が必要ですし、自分がやった方が数倍も早いことを、一つ一つ教えながら、やらせてみなくてはなりません。
紹介した研究成果は知りませんでしたが、私自身が支店長だった当時、以下のことをやっていました。
- 人材育成に力を入れることを支店内に宣言
- OJT指導員(係長クラス)同士が意見交換する場の設置
- OJT指導員以外の課長クラスや場合によっては他の支店の方々にもご協力をお願い
これらにより、新人を育てるという雰囲気をつくるのに多少なり貢献できていたのかなと思います。
そして、OJT指導員が、多忙な中、日々新人と向き合い、また研究成果にあったようにいろいろな方々に協力を求め、新人が様々な経験をする場を作ってくれたことに感謝したいです。
参考)
中原 淳 (著), 2012/9/1, 「経営学習論 人材育成を科学する」