先週は、スキルだけあってもコーチングは機能しないという話をしました。
スキル以前に、信頼関係やコーチングマインド(相手の可能性を信じる心)、自己基盤が必要です。
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では、信頼関係を築くにはどうすればよいかというと、コーチングのスキルの中の「認める」と「聴く」というスキルが有効です。
スキル以前の話をしていたのに、スキルが出てきてしまうのは、信頼関係を構築したうえでコーチングをする際にこれのスキルを使うのはもちろん有効ですが、この2つのスキルは信頼関係を築くのにも使えるからです。
そこで、今回は「認める」というスキルを紹介します。
1.そのまま受け止める
人は認められると、とても安心します。
別の言い方をすると、人は受け入れてもらえると、受け入れてくれた人を信頼するようになります。
この「認める」というスキルの目的は、「相手に安心して話をしてもらえる状態を作ること」、つまり信頼関係を築くことです。
そして「認める」とは、「相手が話していることをそのまま受け止める」ということです。
この「そのまま受け止める」とは、以下の3つのことをせずに話を聴くということです。
- 評価しない
- アドバイスをしない
- 同意しない
「評価しない」とは、「良い」とか「悪い」とか批判したり、人より「優れている」とか「劣っている」とかの判断を加えずに聴くということです。
「アドバイスしない」とは、困っているから相談に来た相手に対してどういうことか、と思われるかもしれませんが、相手が常にアドバイスを求めているとは限りません。まずはアドバイスをせずに話を受け止めることが先です。
「同意しない」も、不思議に思われるかもしれませんが、あくまで相手の話していることを、一つの事実(客観的な事実であるかは問いません)として受け止めるということです。
相手と同じ気持ちになるのではなく、相手がどう考えたりどう思っているのかを理解するようにするということです。
安易に同意してしまうと、相手と同じ思考になってしまい、視野が狭くなってしまいます。
あくまで、「この人は、こんな風に考えているのだな」とか「この人は、こんな感情を抱いているのだな」と相手の心に寄り添いつつも中立的に受け止める必要があります。
以上の3つは心構えのようなものなので、この心構えを持ったまま、「認めている」ということを相手に伝える必要がありますが、それはうなづいたりあいづちを打ったり、相手の言葉を繰り返したりといったことをして伝えます。
2.認めるとは、ほめるだけではない
相手を「認める」というと、相手の成果を認める、つまり「ほめる」というのが分かりやすいでしょう。
あなたが上司の立場にいるのであれば、部下が何か成果を上げたら、どんどんほめてください。もちろんとってつけたようなほめ方でなく、心からほめてください。
ただし、ほめるだけですと、「認める」機会があまりにも少なすぎます。
ほめるとは、例えば、一連の仕事がすべて終わった最終段階において、しかも成功したときしか、できません。
そうではなく、一連の流れの中の取り組み始めた最初や途中段階においても、大いに「認める」ということをしていただきたいです。
私は、この最初や途中段階において、相手を「認める」には、「ありがとう」という言葉が最も有効だと思っています。
有効と書くとテクニックのようになってしまいますが、チームで仕事をしていて、部下がチームに貢献するちょっとしたことをしてくれた時、「ありがとう」と感謝を述べるのはとても自然なことだと思います。
「ありがとう」という言葉で相手のことを「認める」のです。
「ありがとう」よりももっと簡単なのは、「挨拶」です。
朝の「おはよう」や夕方の「お疲れ様」などの挨拶は、社会人として基本ですよね。
そしてこの挨拶は、まさに相手の存在を「認める」というものです。
「認める」の反対は「認めない」ではなく「無視」です。
挨拶をしたのに返してもらえなかったら、無視されたような気になりますよね。是非挨拶をし、挨拶を返してあげてください。
3.認めるとは心の動き
今回は信頼関係を築くために「認める」というスキルを紹介しました。
そして、「認める」とはどうすることかという具体のやり方、つまりスキルも紹介しました。
しかし、認めるとは心の動きです。
心の伴わない「認める」というスキルは、早晩見破られてしまいますし、むしろ信頼関係を損なうこととなります。
この「認める」というスキルは、コーチングの中で最初に習う「スキル」ですが、心の持ちようだけに、私自身最も難しいと感じています。
そこで私はいつも相手の「強み」を探すようにしています。「この人は何が得意なんだろうな」と考えます。
もちろん「強み」を探したりせず、そのまま相手を受け止めるのが、ここで紹介した「認める」と言うことなのですが、私にはちょっと難しいです。まずは良いところを探すということをやってみても良いかもしれません。
そしてこの「強み」を見つけられると、相手の可能性を信じる心である「コーチングマインド」も生まれやすくなります。
相手に敬意を払いつつも、相手に飲み込まれない中立的な心持ちで、相手のことをそのままうけとめられるようになりたいです。
写真:Sven LachmannによるPixabayからの画像