自分のモットーは「強みを生かす」です。自分自身も、そしてチームの各メンバーも、それぞれの強みを生かした仕事をして、成果を上げていくことができたらいいなと思っています。
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ですから、北海道大学の松尾先生の著書「部下の強みを引き出す経験学習リーダーシップ」はとても学びの大きい本でした。
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出典:竹中大工道具館 大工道具、ほれぼれしますね
1.普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴
この本の中で、松尾先生は「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」と「育て上手なマネージャーがやっている指導法」について以下の通り述べています。
「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」
- 弱みを克服させることに重点を置き
- 問題や失敗のみを振り返らせ
- マネージャーが職場のすべてを仕切っている
一方、「育て上手なマネージャーがやっている指導法」
- 強みを探り、成長ゴールで仕事を意味づけ
- 失敗だけでなく成功も振り返らせることで、強みを引き出し
- 中堅社員と連携しながら、思いを共有している
2.でも成長している人がいる
ところが、「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」のような指導法をされても、成長し、そして会社の幹部になっている極めて優秀な方もいます。
この点が疑問だったのですが、松尾先生の勉強会に参加し、機会を得たので質問してみました。
Q.「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」のような指導法をしても、成長し、そして会社の幹部になっている極めて優秀な方もいるのですが、なぜこの方々は成長できたのでしょうか?
A. まず「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」のような指導法というのは、やってはいけない指導法と言うわけではありません。いうなれば、職人を育てるような昔ながらの日本のやり方なのです。
この指導法をすると、指導を耐え抜いた人は超一流の職人になれます。ところが、生き残れるのはわずか1割から2割で、大部分の人は脱落してしまいます。
対照的なのが、ドイツの職人の育て方で、強みを活かしたり、マニュアルを作ったりして丁寧に教えます。すると、大多数の人は平均以上に育つのですが、超一流の割合は日本より少なくなります。
ですから、もちろん本人の努力もありますが、「普通のマネージャーがやってしまいがちな落とし穴」のような指導法を、無事に、もしくは、なんとか生き残った方は、結果として、極めて優秀な人となります。
「なるほど!」と思った瞬間でした。
以前私がいた会社は、まるでふるいにかけるような育成方法をとっていましたが、一握りの一流の職人を育てようとしていたと考えれば腑に落ちます。(注:もちろん仕事内容や組織構造も大きく影響していますが、これは別の機会に述べたいと思います。)
3.これからは
組織の目指すところに合わせて、どちらかの指導法を取ったらよいということだとは思いますが、私はこれからはやはり「育て上手なマネージャーがやっている指導法」、つまり「強みを伸ばす指導法」が必要だと考えます。
それは求められるニーズも多様化し、しかも移り変わりも早くなってきていて、新たなアイディアが求められているからです。
また、働く人の考えも変わりつつあります。反省ばかりを促され苦手なことをやるのではなく、モチベーション高くそれぞれの強みを生かした方が良いでしょう。
アイディアを出せる、多様性を活かせるチームを作っていく必要があります。
最後に、松尾先生より頂いたお言葉を。
「強みを伸ばす指導法は、決して楽な指導法ではありません。マネージャーは部下のことをよく見て、考え、指導法を工夫する必要があります。また、部下も楽なばかりではありません。例えば、成功体験を振り返ることについても、成功したときに『なぜ成功したのか?』と問われ、それについて考え答えを出すことは相当の労力がかかりますし、成功の要因が分かったら『次も成功しろよ』と言われているわけですから。」
「強みを伸ばす指導法」をどうしたら実践できるのか、そして実践する人をどうサポートできるのか、人材育成を専門とする者として考え続けていきたいです。
参考:
松尾睦、2019.10, 部下の強みを引き出す経験学習リーダーシップ, ダイヤモンド社
画像:竹中大工道具館
https://www.dougukan.jp/exhibition