働き方改革の中でやり玉に挙げられる会議。
確かに、長いのになんだかよく分からないまま終わってしまう会議とか、逆に、説明も一方的で、質問もなぜか出席者同士ではなく、事務局の間での予定調和な質問のやり取りをし、シャンシャンと終ってしまう会議とかありますよね。
会議ってどうしたら良いのかなぁ、ということで今まで読んだ本の中から会議に関するものを取り上げてみました。
Halong bay, Vietnam, 2019.12
1.会議でしか生まれないもの
会議とは、「対面の場で、同時に、コミュニケーションを行うもの」です。
中村和彦先生は、著書「入門 組織開発」の中で、そのように述べたうえで、この同時性コミュニケーションを行うことでしか生まれないものとして、以下の3つを挙げています。
①創造的思考
②チーム学習
③将来のビジョンや目標の合意
①創造的思考、つまりアイディアは、多くの人とともに自由な雰囲気の中で対話することを通して生まれることが多々あります。
②チーム学習は、会議という場を通して、議題となっている仕事上の内容や課題について学ぶとともに、会議の進め方やお互いのコミュニケーションの仕方を学ぶというものです。多くの人(チーム)が会議という場にそろうことで、会議という場が学習の場になります。
③将来のビジョンや目標の合意とは、会議の場で共通の目標について話し合い、自分たちで目標を決定することで、内発的動機づけが高まるというものです。
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2.意義のある会議とは?
2-1.生産性の高い会議のやり方
伊賀泰代さんは、著書「生産性」の中で、会議の生産性を高めるにあたり、「会議の時間を短くすることは本質ではなく、会議の質を高めるべき」と述べています。
そのためにはまず、「会議の達成目標(つまり、議題)を明確にする」ことが必要です。
議題を会議の事前に通知しておくということは、比較的実施されていると思いますが、「○○について」という議題をよく見かけます。
会議の達成目標を明確にするためには、もっと具体的にする必要があります。
例えば、
「来月の○○販売三周年記念イベントについて」
⇒「来月の○○販売三周年記念イベントのメインの出し物の素案出し」
「先月発売された○○の販売実績の報告」
⇒「先月発売された○○の販売目標未達の理由の共有と今後のてこ入れ策の決定」
(確かに、報告だけ受けても、「それで?(So what?)」となってしまいますよね。)
また、会議の時間の中で最も生産性が低いのは、「資料を用意した人がその資料を説明するのに使う時間」であるため、「数分の時間を取って全員が資料に目を通した方が良い」です。
(この資料を読むというやり方は、Amazonの会議のやり方としても知られています。そしてAmazonの会議は、それ以外の点もユニークです。
参考: https://news.livedoor.com/article/detail/15433188/)
さらに、会議では「組織としての意思決定」がなされることが必須だとしています。なぜなら、どんなに良い議論をしても結論が出なければ、その会議の生産性はゼロとなってしまうからです。
この会議において決めるべきことが決まらない主な理由としては、以下の4つがあります。
①意思決定者が会議を欠席した
②意思決定のロジックが明確でなかった
③データや資料がそろっていなかった
④会議の主催者/司会者が「結論を出す」ことにリーダーシップを発揮しなかった
このうちの、①は事前準備において防ぐことができ、④は個別に主催者/司会者を指導することで防げますが、問題は②と③です。
「②意思決定のロジック」とは、どういう条件が整ったらどういう判断をするかというものです。
このロジックが定まっていなければ、いくら情報を集めても何も決まりません。
例えば、会議の場で、その事実が明らかになっても何ら意思決定に寄与しないような細かな事柄から質問し時間を浪費する出席者がいますが、そういう人には、それらの情報が明らかになったらどういうロジックで意思決定をしようとしているのかを尋ねる必要があります。
次に、「③データや資料がそろっていなかった」というのも、「②意思決定のロジック」を明確にしておくことで、集めるべき資料を明確にでき延々と資料集めをすることを防げ、何より、必要な情報がそろったら、あらかじめ決めておいた「意思決定のロジック」に従って、自動的に結論を出すことができます。
2-2.会議の無駄をなくす要素
この結論を出すということの大切さを、調査によって明らかにしたのが、中原淳先生の「残業学」のコラムにありました。
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読書メモ 「残業学」 中原淳+パーソル総合研究所 - うめさんブログ
中原先生は、「パーソル総合研究所・中原淳 長時間労働に関する実態調査」を用いて、重回帰分析を行い、会議の無駄削減に最も寄与する要素として以下の2つを明らかにしました。
①会議の所要時間に制限が設けられている
②会議終了時に、司会者が決定事項と次に行うことを明確にしている
ここで面白いのは、会議を効率化するやり方として世間で言われている、事前準備や目的の明確化などの「始まり方」は、ほとんど関係がなかったこと。
さらに、「限られた人だけがしゃべる」といった「議論の偏り」も、統計的には影響がみられなかったことです。
(さらに詳細はこちらをどうぞ:https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201812130003.html)
(補足:自分の考え)
この2-1における「会議の達成目標(つまり、議題)を明確にするべき」というご指摘と、2-2の「事前準備や目的の明確化などの始まり方は、ほとんど関係がなかった」という調査結果をどう解釈したら良いでしょうか?
一つは、議題が明確化されているといっても、その明確化度合いには差があるということではないかと思います。私自身の経験では、議題がない会議と言うのはあまりありませんが、2-1の例「先月発売された○○の販売目標未達の理由の共有と今後のてこ入れ策の決定」のレベルまで具体化された議題は見たことがありません。
さらに、2-1の後半で述べられていたように、「どんなに良い議論をしても結論が出なければ、その会議の生産性はゼロとなってしまう」ということを、2-2の研究成果は示しているのだと思います。
3.まとめ
以上をまとめると、、、
- 会議という場での同時性コミュニケーションでしか生まれないものがある
⇒これを裏返すと、同時性コミュニケーションが要らないものは会議する必要がない
- 議題は何を決めなければならないかが分かるほど明確に
- 会議の場では資料を説明させず、各自読む(注:読んで分かる資料にしておく必要がある。)
- 会議の場において情報が足りなくても、意思決定のロジックを決める
- 最初に決めた時間内に何が何でも結論を出す
自分も日々の会議や打ち合わせで気をつけたいです。
参考:
中村和彦, 2015.5, 入門 組織開発 生き生きと働ける職場をつくる, 光文社
伊賀泰代, 2016.12, 生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの, ダイヤモンド社
中原淳, パーソル総合研究所, 2018.12, 残業学, 光文社新書
パーソル総合研究所・中原淳, 2017-8, 「長時間労働に関する実態調査(第一回・第二回共通)」